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森の奥にて

「ねぇ、何でアンタが付いてきてるのよ?」


 早朝よりシラヌイ達はギルドからの依頼の為に王都の南門より南西へ向かって進んでいる最中である。その間ずっと不機嫌だったファータがとうとう悪態をつくに至った理由は間違いなくこの男の存在だろう。


「えー、おチビちゃんそんなに俺様の事嫌い? 俺様傷ついちゃう」


 ドラークのチビという言葉にファータは反応し前回同様額に青筋を浮かべてドラークを刀で斬り付けるがその剣閃はやはり空を切るばかりである。暫くすると二人はじゃれ合い? を終えシラヌイの元へ戻ってきた。


「もう! ホントに何なのよコイツ!」

「そんなにイライラするとシワが増えるぜ?」


 何故か同行しているドラークはファータが怒る様を見て悪戯の成功した子供の様に実に楽しそうにしている。


 そもそもドラークがシラヌイ達の依頼に同行する理由は無い。話し合いの最中途中から乱入してきたとは言えあくまでこの依頼を受けたのはシラヌイとファータだからだ。しかし、ドラークは「お前らと一緒に居ると面白そうだから」と無理矢理着いてきたのだ。とは言え二人の仲の悪さにシラヌイは頭を抱える。


「頼むから静かにしてくれ」


 静かにシラヌイは呟くのだった。



 一時間ほど移動すると周囲の木々が少しずつ生い茂り日の光は枝と葉に遮られ進むごとに薄暗くなっていく。それでも人が通れる道が確保されているのは、冒険者たちが魔物の討伐や薬草の採取等でよくここを訪れるのが理由だろう。


 奥に進むにつれて猿のような見た目のエイプ、狼のような見た目のウルフ等少しずつ魔物の姿も現れるようになる。いずれも討伐ランクは青や緑の魔物の為、今のシラヌイ達にとっては敵ではない。その為、敵対するものだけ返り討ちにする形で進んで行く。


 暫く進んでいると唐突にシラヌイは刀を振るう。高い金属音と共に何かが弾かれる。足元を見ると若干見覚えのある戦斧が地面に突き刺さっていた。


「久しぶりだな兄ちゃん相変わらずいい反応してるじゃねぇか」


 奥の茂みからは見覚えのある強面の三人組の男が姿を現す。そして各々ポーズを取りながら聞き覚えのある口上を述べ始める。


「俺は頭脳担当デクス!」

「俺は怪力担当シニス!」

「そして俺がリーダーのロクス!」

「泣く子も黙るロクス盗賊団とは俺たちの事よ!」


 ドヤ顔で満足する三人の姿を見てシラヌイは額に手を当てて眉間にシワを寄せている。そんなシラヌイの横ではファータとドラークが口元を隠しながらプルプルと身体を震わせる姿があった。


「お前達、盗賊団を名乗ってるんなら他にも仲間は居るんだろ? 姿が見えないんだが……」

「何言ってんだ俺達三人だけに決まってるだろうが」


 正直な三人組にシラヌイは呆れを通り越して逆に心配そうな顔で男達を見る。


「クッ……クッ……青少年……友達が少ないのは分かるけどちゃんと友達は選んだほうがいいぞ……」

「プッ……フッ……そ、そうね。友達はちゃんと選んだほうがいいわよ」

「お前らいい加減にしろよ」


 口元を抑えながらシラヌイの肩をポンポンと叩くドラークと横で腹を抱えてプルプル震えているファータの脳天にシラヌイの鉄拳による制裁が加わる。タンコブを作りながらその場で屈み込むファータと何事も無かったかのようにケロッしているドラークを横目にシラヌイは三人組に問いかける。


「お前達はここで何をしている?」

「へっ、ここに〝邪神の末裔〟が居るって噂を聞いたんだ。そいつを教会に引き渡してたんまり金を貰うんだよ」


 またもや三人組のリーダーは正直に答えてくれた。


「そんな事よりここで会ったのは何かの縁だ。この前の恨み晴らさせてもらうぜ!」


 言い終わるや否やロクスはシラヌイ目掛けて突進してくる。

 

 その時だった――


「プギャ!」

「ア、アニキ!!」


 近くの茂みから黒い〝何か〟が横切ったと同時にロクスを突き飛ばした。一瞬聞こえた悲鳴と共にロクスは宙を舞いながら森の置くへと消えていった。同時にデクスとシニスもロクスを追い掛ける形でこの場を去る。


 別の茂みへと身を隠したそれは気配を絶ちつつ静かに移動しながら次なる標的へと殺気を向ける。


 敵意を感じ取ったシラヌイ達はその場で警戒を強める。


「今のが依頼の対象かしらね?」


 他の魔物とは明らかに違うその動きは並の冒険者では姿を捉えるのは確かに難しいだろう。


 双方とも相手の出方を窺っているのか周りには静寂が訪れる。その静寂を破るかのように動いたのはシラヌイとドラークだった。ドラークは握った拳を、シラヌイは帯刀した刀を柄頭から打ち込んだ。そう……ファータに目掛けて。


「ちょ、ちょっと!?」


咄嗟にファータは屈み込むと二人の攻撃はファータとは別のものに直撃する。


「油断は禁物だぜおチビちゃん」


 それは唸り声を上げながら数メートル吹き飛ばされるがすぐさま体制を整える。そこそこ手ごたえのある一撃ではあったが致命傷にはならなかったようだ。しかし、今の一撃で蹲る相手の姿は視認できた。


「あれは……エイプか?」


 そこにはエイプに似た魔物が立っており、シラヌイのこの疑問符の理由はその姿にある。その大きさは通常のエイプの三倍近く大きく、発達した筋肉はミシミシと音を立てて躍動している。そして注目すべきはその左胸に埋め込まれた黒い結晶であり、黒く禍々しいオーラを放っている。


「へぇー、中々面白そうな相手じゃねえか」


 ドラークは指の関節を鳴らしながら巨大エイプに歩み寄る。


「グオオオォォ」


 しかし、巨大エイプは再び唸り声を上げたかと思うとすぐさま森の奥へ去っていく。


「え、何? いきなり逃げ出したんだけど?」

「さすがにそのままにはしておけないな。追うぞ!」


 三人は逃げた巨大エイプを追う。巨大エイプはその巨体に似合わずに素早く木々の隙間を巧みに移動していく。


「キャーーーー!!」


 数分ほど追い掛けると奥から女性らしき悲鳴が聞こえてくる。


「急ぐぞ!」


 木々の先を抜けると少し開けた場所に出る。そこにはさっきの巨大エイプと倒れた少女が見える。巨大エイプは大きく腕を振り上げるとそれを少女目掛けて振り下ろそうとする。


「五の太刀・風牙」


 ファータが居合切りの動作を行うと同時に風属性の斬撃が放たれ巨大エイプの両腕が血飛沫と共に両断される。怯んでる隙をついてシラヌイは巨大エイプを蹴りつけ、少女から遠ざける。


「ファータその子を頼む」


 シラヌイから指示を受けたファータはコクンと頷くと少女に駆け寄る。


 巨大エイプとファータの間に壁になるように立つシラヌイとドラークは改めて殺気を放っている存在の方を見るとその光景に驚愕する。先ほど斬り落としたはずの腕が何事も無かったように再生し、巨大エイプは両手で胸を打ち鳴らしながら咆哮する。


「ヒュー、こいつすげぇな不死身か?」

「知るか。来るぞ!」


 突進してくる巨大エイプは両腕を大きく広げ、ドラークを襲う。対抗するようにドラークも両腕を広げ、両手を組む形で力比べが始まる。


「へぇー? 俺様と力比べって訳? いいね、そう来なくちゃな!」


 お互いに硬直状態が続いたが、徐々にドラークが一歩一歩進み始めその都度巨大エイプは後ろへ後退する。ある程度進んだドラークはそのまま巨大エイプを持ち上げると投げ飛ばした。轟音と共に木の折れる音が響き渡る。


「ドラーク、数秒でいいからあいつの動きを止めてくれ」


 ドラークは口元に笑みを浮かべながら巨大エイプに近寄ると手招きをする。


 「ほら来いよデカブツ」


 巨大エイプはドラークを凝視すると地面がえぐれるほどの踏み込みで瞬く間に間合いを詰め、奇声を発しながら乱打を浴びせる。しかし、怒涛の攻撃は一発一発丁寧に防御されドラークに致命傷を与える事はなかった。


 段々と疲労が溜まったのか大雑把になってくる攻撃の隙をドラークは見逃さなかった。大振りに放たれる右ストレートを最小の動きで躱すとそのまま脇で抱えてがっちりとホールドする。咄嗟に巨大エイプは右腕を引こうとするがその行為をドラークは許さない。


「終わりだなデカブツ」


 身動きが取れない巨大エイプは背後から漂う恐怖感に思わず振り返ろうとした瞬間、血飛沫と共に頭部が宙を舞う。シラヌイの斬撃により頭部を切り離された胴体は力なく地面に倒れ込む。


「いやーお見事。それじゃおチビちゃん達の無事でも確認しますかね」


 ドラークがパチパチと手を鳴らしながらそう言うと二人はファータ達の元へ駆け寄る。


「ファータ、その子の容態はどうだ?」

「気絶してるだけでケガとかは無さそうね。もう少ししたら目を覚ますと思うわ」


 その言葉を聞いてシラヌイは安堵する。


「しっかし、何でこんな所にこんなお嬢ちゃんが居るのかねぇ?」

「分からないが、とりあえず目を覚ましてから事情を聞けばいいさ。それよりも……」


 話を続けようとしたシラヌイは再び背後から気配を感じ取る。


「――ッ!?」


 咄嗟に振り向いたシラヌイの目の前には倒したはずの巨大エイプの胴体が今まさに腕を振り下ろすところであった。反応が遅れ、シラヌイは防御態勢に入るが間に合わない事を察しダメージを覚悟する。


 しかし、来るはずの衝撃と痛みは来ることは無かった。


 そこにはドラークが巨大エイプの左胸目掛けて腕を突き刺している姿があった。そのまま黒い結晶を鷲掴みし腕を引き抜くと巨大エイプの胴体は白い灰となって崩れ落ちていく。


「最後まで油断は禁物だぜ青少年?」

「……すまない。助かったよドラーク」

「しかし、こいつは一体何なんだ?」

「……さぁな。とりあえずその結晶を持って帰って、ありのままを報告すればいいだろう。森の脅威は取り除いたんだ、上出来ってところだろう。後はこの子をどうするかだが……」


 シラヌイは少女の方へ近寄ると顔色を窺う。


「とりあえず冒険者ギルドに連れていくか」

「それでいいんじゃない? どこの子かも分からないし保護くらいしてくれるでしょ」

「まぁそれが無難じゃねーの?」


 そのままシラヌイが少女を抱えようとした時だった。


「申し訳ありませんが、その必要はありませんよ」

「「「──!?」」」


 三人の目の前でいきなり衝撃が走る。シラヌイとファータは運良く直撃を避け、数メートル吹き飛ばされただけだったが、ドラークは直撃したのか猛スピードで森の奥まで吹き飛ばされ姿が見えなくなる。


 すぐに体制を立て直したシラヌイとファータが衝撃が起こった方を見た先には大男が一人だけ立っていた。


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