お前ならどうするんだ? ロシナンテ。
砂が吹き荒れる。砂漠の真ん中にポツリとそびえる砂まみれのビル街は、突風に襲われている。
鉄の色をしたヘリコプターは、ビルとビルの隙間をぬって、大通りの上に現れた。後部座席の扉はスライドして開け放たれ、中から一門のガトリング砲弾が、操縦者なしで構えてあった。
ヘリコプターとは思えない挙動で、あたりの砂を撒き散らす。
『敵機発見しました!! これから、迎撃態勢に入ります!!』
ジャキン!!
『錬成・ガトリング砲台』
定めた狙いは、太一とロシナンテだ。
太一は、銀と青と黒の戦闘服の腕を伸ばして指差す。
ロシナンテは砂から目を守るため、深めに帽子をかぶった。
「あれはなんだ!?」
「みりゃわかんだろ、戦闘ヘリだよ!」
『発射』
ガトリング砲台のリボルバーが回転した。赤い火花を散らしながら、後ろに続く金の砲弾を吸い取っていく。砲台からは、線のような残像で、砲弾を解き放った。
太一とロシナンテは二手に分かれて避けた。
戦闘ヘリは別れた二人を追うため、車体の角度を斜めに逸らす。
『錬成・66ミリバルカン』
戦闘ヘリの、魚でいえば腹の部分。そこに、青い光が渦巻く。覆い隠していた光が散っていくと、黒いガトリング砲台がもう一門ぶら下がっていた。
後部座席と別々に、太一とロシナンテを攻撃した。
二人は、大通りを挟んでいた廃ビルの陰に身をひそめる。砂にまみれたコンクリートは、大型の砲弾でくり抜かれる。二人を追うように、廃ビルの壁を貫いた。
砲弾は、廃ビルの壁を通って、太一の横に着弾する。
「この威力、やっぱりただの砲弾じゃない」
「さっき言った、劣化物質の砲弾だな。人間相手に使うもんじゃねぇ」
「そっちから攻撃できるか?」
「忘れてねぇだろうな? 俺の銃弾は曲がるんだゼェ」
ロシナンテがカウボーイハットを手で押さえる。ヘリの風に煽られながら、廃ビルの後ろで、空に銃を放つ。
ぴゅう、っと二発の銃弾は空気を突き進む。しばらく空に飛んで行ったのを見ると、またぴゅうっと降りてきて、ヘリに突き刺さった。
操縦席の窓に穴が開く。操縦のメインパネルを打ち抜いた。
戦闘ヘリの挙動にすぐさま変化が現れた。
『操縦席、被弾』
「よっしゃ!」
「まだだ」
『錬成・メインパネル』
返答ヘリを取り巻くように、青い光の粒が現れた。泡の渦で周りを囲むと、戦闘ヘリの挙動はあっという間に立て直される。すぐさま、操縦席を守るための、鉄シャッターがガラスに差し代わる。
太一は青い銃を構えながら、顔だけで覗いた。
砲弾は見逃さない。
『発射』
「あっぶねぇ!」
ロシナンテも連続で銃を空に撃ちはなったが、降りてきた銃弾は鉄のシャッタに阻まれてしまう。
「俺もこいつみたいに強い銃弾が欲しいぜ」
「なんとかならねぇのか!?」
戦闘ヘリがスイングするように飛行して、二人を狙える位置に移動した。バルカンとガトリング砲台で、太一とロシナンテのいる路地に砲撃する。
砂地を駆け抜けて、廃ビルをの陰に隠れ直した。
ロシナンテの隣に、砲弾が着弾する。
「お、おい、太一!! お前のリーダーはまだ帰ってこないのか!?」
「おいそんなことよりなんだよこのヘリコプター!! さっきから攻撃しても全部再生しやがるぞ!!」
「くぅ! こりゃ……ディオグラディティの再生兵器だ」
「再生兵器、聞かなくてもなんとなくわかったぞ今」
『錬成・63連射バズーカー』
戦闘ヘリの腹を、さらに青い光の粒が覆った。解き放たれると、真っ黒な筒のバズーカーが二問。大きくて丸い黒の弾薬が、ぶら下がって地面にこすれている。
廃ビルに連続してバズーカーが放たれる。壁はぶち破れ、地響きは起こり、火薬の匂いが充満した。瓦礫が崩れ、ロシナンテの陰が見える。
後部座席のガトリング砲台が彼を射撃した。
だが、ロシナンテは壁を走るようにかわす。銃弾との鬼ごっこが始まった。
「オメガブースト!」
戦闘ヘリに黒い陰が落ちる。上から飛びかかったのは、ジェットエンジンの翼を背中につけた、太一である。きらびやかな戦闘服で、鉄の機体にしがみついた。
スライドしている後部座席に銃を突っ込んで、メインパネルを銃撃した。
ヘリの挙動が変わり、火花をあげながら、廃ビルの2階部分にプロペラをかすめる。
「攻撃の手を緩めるな!! 再生する前に倒すんだ!!」
「やってるだろもう!!」
『錬成・99連射誘導ミサイル』
また、戦闘ヘリが太一と一緒に光に包まれた。
「早く逃げろ!」
ロシナンテは目の前の光景を見て声をあげていた。
廃ビルは大通り側に崩壊して、壁がない。ヘリは無事立て直して、崩れたその姿を眺めているようだった。
ビル、壊れた床の上に、太一が立ち上がろうとしていた。
ミサイルの矛先が、太一の方を向いていた。
『発射』
「逃げろ!!」
ロシナンテの声も虚しく、半壊状態の廃ビルに、ミサイルの一斉砲撃が始まった。逃げるロシナンテの背の後ろ、爆発が爆発をさらに膨らませ、黒い爆煙が舞う。
地面は揺れ、瓦礫の雨が降っていた。
99連続のミサイルを受けた廃ビルは、もうどこにもない。
焦げた地表を、無人の戦闘ヘリは見下ろしていたのだ。
——太一さんを転送しました——
「うわあああああああ!」
空から太一が降ってくる。青や銀のきらびやかなスーツは、太陽の光で輝いていた。戦闘ヘリに手を引っ掛け、ガリガリと引っかかる。
「生きてたのか!」
「当たり前だろ!」
太一はそのまま戦闘ヘリの尾っぽにまたがった。両手で機体を抱きしめる。
戦闘ヘリは振り落とそうと、中で見事なパフォーマンスを見せた。斜めになったり、ひっくり返ったり、尾っぽを自由自在に振り回す。
だが、そのうち。太一はその尾っぽを腕力でへし折ってしまったのだった。
「マジかよあいつ」
唖然とするロシナンテの隣に、太一が戦闘ヘリの尾っぽを担いで、降り立った。
「だいぶ、この世界にも慣れてきたかな」
「慣れとかそういう問題なんか、それは」
「これ担いで後で写真でも撮ろう」
「釣りじゃねぇんだよ」
太一は空から着地するまでに、戦闘ヘリが別の廃ビルに突っ込んだのを見ていた。粉々に砕けながら、爆発する様を。
近づいてみると、黒い煙と、火薬の匂い、鉄の焼けた焦げ臭い匂いもした。
ロシナンテが、太一を後ろから引っ張る。
「近づくな、劣化しているとはいえ、放射性物質を使った武器がある」
「ああ、そうだったな」
「それより、早く逃げちまおうぜ。こいつも、すぐにまた元の戦闘ヘリになって戻ってくる」
「こんなけやっても再生するのかよ!?」
「当たり前だろ、ワンダージュエル使ってるんだから。ほぼ無限だ」
「ワンダージュエルって、そんなにいくつもあるのか?」
「まあ、鉱物の総称だからな」
『錬成・戦闘ヘリSS9(ナイン)』
「ほーら、言わんこっちゃねぇ」
ヘリは赤い宝石を中心に、青い光の渦に巻き込まれていった。
「もしもだ、蚊1匹が戦闘ヘリと同じ実力を持っていたとしたら。お前ならどする?」
「それはつまり?」
「それはつまり、亜の小さな宝石をブチ抜かねえと、このヘリは倒せないってわけさ」
さあ、お前ならどうするんだ? ロシナンテ。




