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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第32時限目 親恩(しんおん)のお時間 その6

「も、もえちゃん、怒って……ない……?」


「うん、怒ってなかったよ」


 怒られるのを覚悟かくごしていたのか、まゆちゃんはちょっと拍子抜けというか、肩透かしを食らったように目をしぱしぱさせて私に尋ねたから、私は首肯しゅこうした。


「萌ちゃん……じゅんちゃんを、見てた?」


「うん。繭ちゃんのことだから全部自分でやろうとして無理するだろうし、よろしくって言われてたからね」


 私が言うと、腕の中の繭ちゃんは、


「無理は――」


 と視線を泳がせながら答えようとするから、繭ちゃんが言い切る前に、


「してるよね」


 と被せる。


 繭ちゃんは良いお友達だとは思っているけれど、だからこそ無理して自分で何でもやろうとしてしまうのを良しとしてしまっては駄目だめだと思うから。


 ……まあ、私自身がそういう失敗してきたからだから、私の想いの押しつけといえばそうなのかもしれないけれど。


 でも、今は足に湿布しっぷって、かべに手を突きながら歩く“怪我人”なのだから、無理するのは受け入れられない。


 でも、私の言い方がきつかったからか、繭ちゃんがしょんぼりしているから、ちょっとこう……場をなごませるような言葉を……。


「だから、萌にはもし繭ちゃんを見つけたら捕獲しといてって言われてた」


「ほ、捕獲!?」


 人の目ってこんなに真ん丸になることあるんだ、と少し感心したくらいには繭ちゃんの目が真ん丸になっていたから、私は責任を持って、


「あはは、捕獲は冗談じょうだんだけど、とにかく見つけたときだけでいいから、手を貸してあげてって」


 と正しい情報を伝えた。


「……」


 私の言葉に、繭ちゃんの表情がちょっとずーんと沈む。


「とりあえず、お手洗いに連れていくね」


 そう言って、私はトイレまで繭ちゃんを連れていく。


 もちろん、中に入るわけにはいかないのでしばらく外で待った後、出ていた繭ちゃんを抱えて、再び繭ちゃんの部屋にもどった。


「足の方は本当に大丈夫?」


 ベッドに繭ちゃんを座らせてから尋ねると、


「……本当は、ちょっと、痛い……」


 と消え入りそうな声で答えた。


「だったら、やっぱり無理しちゃ駄目だめだよ」


「うん……」


 しゃがみこんで繭ちゃんの足を見ると、坂本先生にってもらったらしい湿布は少しがれかけている。


 1度貼り替えた方がいいのかな?


 でも、これからお風呂の時間もあるし……お風呂の後の方がいいのかも。


「萌も私も、繭ちゃんのこと心配してるんだから」


「分かって、る……けど……」


 こういうところは筋金入りの繭ちゃん。


 うーん、繭ちゃんが気軽に頼ってくれるようになる、良い言い方はないだろうか……。


 ……そんな簡単な魔法まほうの言葉みたいなもの、ないよね、うん。


 とりあえず、脳内辞書をひっくり返して、ひねり出した言葉がこれだった。


「えっと、頼られるのがうれしいタイプの人も居てね?」


「?」


 急な私の言葉に、繭ちゃんが目をぱちくりさせた。


「頼む側は負担になるかも、と思っちゃうけど、むしろだれかが喜ぶ姿を見たい人も居るんだよっていうか……」


「……」


「むしろ頼られないと、自分じゃ頼りないか……ってしょんぼりしちゃったりすることもある。私とか……萌も同じじゃないかな」


 そして私は立ち上がって、最後に、


「繭ちゃんが頑張がんばり屋さんなのは分かるし、私もあまり人に頼らないタイプだったけど、そういうのでいっぱい失敗してきたから。毎回じゃなくてもいいから、たまには頼ってね。私でも、萌でも、もちろん他の子も」


 と言ってから、部屋を出る。


 まあ、そうは言っても……そうそう性格は変わらないから難しいかな。


 とびらが閉まる直前。


「あ、あのっ!」


 繭ちゃんがいつもとは違うくらいの、大きな声を出したから、私は後ろ手に握っていたドアノブを止めて、振り返った。


「ちょ、ちょっとだけ、のどが乾いちゃった、から……え、えっと、飲み物が欲しい……かな」


 繭ちゃんがわたわたしながら、そう言ったから、ちゃんと向き直って、


「うん、分かった。麦茶にする? それか、ジュースの方がいい?」


 私はそう尋ねると、


「お、お茶が、いい……かな」


 と繭ちゃんが返す。


「分かった。ちょっと待ってて」


 足取り軽く、私は部屋を出て、お茶を持って部屋に戻った。


 折角せっかくだからと、ちょっとだけ2人でお茶会みたいな時間を過ごしたけれど、それ以降は特に呼ばれずに……翌日の朝。


「準、ありがとう」


 朝、食堂に向かう途中で萌とすれ違い、軽く手を上げて「おはよう」と言った直後の、萌の返答がこれ。


「え?」


 突然、そう言われたから私は何のことだっけ……? と脳内を必死にサーチしていたのだけれど。


「昨日の夜、繭が自分からお風呂に入るの手伝って欲しいって。あれだけ、誰かに頼るのを気にしていたのに」


「え? あー……」


 そっか、私に連絡はなかったけれど、あの後に繭ちゃんは萌を頼ったんだ。


「まあ、萌が心配してたよって話をしたくらいかな?」


「それだけであの子の気が変わるなら、とっくの昔に素直になってるわよ」


 あきれ顔で目をせた萌は、


「まあ、何を言ったのかとか詮索せんさくはしないけれど……とにかく、ありがとう」


 と言って、また笑った。


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