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闇を背負う者、破壊を有す  作者: 松佐
外伝,冒険者ミウ
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冒険者の迷走

ミウは後悔していた。しかし、その後悔も遅かった。後悔するのが遅かった。今日付で契約が切れる。だから学園を去らなければならない。つまりノイルとの接点が失われる。


「これじゃあ、自滅よね。ノイルは何も悪くなかったのに・・・一応、私の方が年上なのね。冷静になれなくて、ほんとに駄目で。へこむわ、凄く」


かつては学園を賑やかしたミウの恋煩いの噂は収まり、今最も話題性の高い噂は先日転入してきたエルフとダークエルフの二人と生徒会長が婚約した、というものだ。聞けば、ノイルの両親は世界的に有名ないわゆる救国の英雄とかそういう部類のお二方。高位のエルフ族とも釣り合いが取れるどころか相手方の方が釣り合いが取れそうにないほどの身分をお持ちだったわけだ。只者ではないと理解していたつもりだったけれど、実際に知ってみると驚きを隠せない。


お似合いの組み合わせ、そんな声が聞こえる度に心が荒む。年下の子に嫉妬なんて情けないかもしれないが如何せん、そっち方面に関しての経験はゼロで結果的にこの感情を持て余して振り回されて自滅。もうどうしようもない。だけど、潔く捨て去れる程度の軽い気持ちでもなくて・・困ったものだ。最終日くらいは明るく教師生活を満喫、というのもおかしいが楽しむつもりだったのにミウの口からは悩ましげな吐息以外は出てこない。


あの出来事以来彼とは口を聞いていない。最終的に問題があるのは自分自身だと解っている。向こうは歩み寄る努力をしてくれている。それを拒んでいるのはミウ自身だ。彼は悪くない。悪いのは自分。解っている。解っているからこそ罰が悪くて。なのに・・謝りたいのに謝れない、素直になれないそんな自分が嫌だった。今、こうしている間も彼に寄り添っているのはあの子達。後悔と嫉妬、呆れと嫌悪が頭の中を堂々巡りして、出さなきゃいけない答えも下さなければならない決断も何も何もかも分からず解らず判らない。いや、彼は一言謝罪すれば許してくれるだろう。けれど、思考はどんどんと迷走していく。


*************************************


例の二人は転入してから直ぐに行動を開始した。生徒会長ノイルへのアプローチを。逆にノイルは休み時間ごとにミウへアプローチしに来る。教師と生徒という関係しかなかったミウと転入生だったが、そういう事が何度も続けば自然と関係も変わってくる。気づけばミウは教師から恋敵へとジョブチェンジしていた。その頃からだ。自宅への帰り道、生徒会長との接触を止めろという警告を引っさげて襲撃する者が出現し始めたのは。毎日のように撃退するものの、日毎にメンバーが変わり段々と実力の高い者が来るようになってきた。


最終的には自宅にさえ手が伸び、夜間も襲撃される日々が続いた。さすがにミウも精神的に疲れ始めていた。そして、休み時間ごとにノイルが会いに来てくれること。とても嬉しかったそれもイライラを募らせる行為へと変わった。彼からあの二人の臭いがする。自分が大変な目にあっているのに彼はあの二人と会っている。普通に考えれば彼は付きまとわれているだけなのに疲れた精神と寝不足の身体は正常な思考を妨げた。自分に向かられた笑顔、いつも見惚れていたのに今では何故か憎らしい。気づけば、彼に叫んでいた。彼を怒鳴りつけていた。


「毎時間毎時間会いに来て何のつもり?あなたには可愛い彼女が二人もいるでしょ?そっちとイチャイチャしてればいいじゃない!私をからかうのは止めて!不愉快よ!」


あの二人の思う壺、そんな事も分からないくらいに正常さを失っていた。弁解する彼にもイライラして気づけば、全力で光衝撃を叩きつけていた。そして我に返る。教師が生徒になんてことをしてしまったのか。さすがというべきか咄嗟に同じ魔法をぶつけて威力を減衰したのかダメージが軽度だったようだが蹲る彼に手を伸ばしかけて、引っ込める。わけがわからなくなって、その場から逃げ出していた。


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