生徒会長の決断
「全く俺も詰めが甘い」
ノイルは学園の一室で自嘲の笑みを浮かべていた。物理的、直接的な妨害ならば全てを跳ね除けるのは容易い。そうであれば容易かったのだ。しかし相手方は予想外の攻めをしてきた。
「女性ならでは、というのは負け惜しみか」
間接的な、精神的な攻め。確実に自分の落ち度だ。経験と基本的な配慮の不足。他の女の匂いをさせて寄っていくなんて笑い話にもならない。オマケに婚約がどうのと事実無根な話をよくもまあ広げてくれたものだ。一国が一人の学生にここまで執心してくる事実には共学だ。一番予想外なのは自分がダメージを受けてる、それくらい誰かを想えてるってことか。
ミウの契約期間は今日で切れる。今までみたくじっくりなんて形振り構える状況ではないし形振り構ってる場合じゃない。後悔されるのもさせるのも、どちらもご免だ。ミウには悪いと思う。徹頭徹尾、俺が振り回してるから。今回の臨時講師の件もそうだった。興味もなかった肩書きと権力をフルに使って国王に交渉して協力を得た。
尤も、あの方は自分のお眼鏡に適いさえすれば身分、肩書き関係なく平民でも貴族でも気にせず招待するし謁見を許す。そういう人だから権力を使わずとも素直に頭を下げればよかっただけなのだが。そして、謁見できたという事はある程度の信用と期待を得られたという事。だから後は全てが俺次第。極端に言えば彼女を捕まえられるか逃げられるかのどちらかだ。
そして今日、彼女がこの学園を去る。だから明日からエルフの国の連中が後顧の憂いの排除を開始するだろう。自らが送り込んだ二人の色仕掛けが俺に効いていない以上、対抗馬であるミウを表社会から消すのは定石。あの国はエルフが最も高貴だと豪語する割にやっている事は贈収賄、人身売買、暗殺などなど法律に抵触することばかりで、そこらへんの小物と変わらない。
邪魔者に対する奴らの思考は殺すか奴隷にするかの二択だ。恋人志望の贔屓目を差し引いてもミウは美人だから、殺されることはないだろうが捕まれば奴隷は確実。結局、このまま時が経てば経つほどに事は面倒になっていく。
「じっくり攻めていくつもりが案外、時間が許してくれなかったからね」
行こうか。気持ちの押しつけは良くないが、今は押し付けてでも彼女を捕まえる。俺に繋ぎ留める。絶対に逃がさない。




