冒険者と恋の刺客
最近、学園内では時期外れの転校生がやって来ると噂になっている。話のネタとしてのレベルで言えば「ミウ先生の恋煩い」に劣るものの、注目されている事柄ではあった。何でも転校生は二人でエルフ、ダークエルフの女子。それも王族に匹敵するやんごとなき身分。時期外れの転校の裏にある目的は婿探し・・と言いつつ、生徒会長を標的として完全ロックオンしているとか。基本的に学園内に流布される噂の出処は隠密行動においては生徒会長にも比肩すると名高い東洋出身の生徒。情報の早さと正確性に定評があり、先日学園長の口から正式に転校生の存在が明かされた。転校生の身分が身分なため、それぞれエルフ・ダークエルフの国からの打診があり中立を主とする学園ではあるが、特例として転校前に告知と注意がなされた。
先に言ったように転校生の標的は生徒会長ことノイルである。彼の両親は単に悪魔とエルフとしか明言されていなかったが、実は片や悪魔族における名門筆頭とも言える家の歴代最強の実力者、片やエルフ族内で最も貴かったとされるエンシェント・エルフの先祖返り。彼の夫婦を前にすれば並みの者では意識を保てず、大抵の国の王でさえ頭を下げる。エルフ・ダークエルフの治める国においても王族と同列に扱われて当然という存在だ。その息子は両親の力を受け継いだハイブリット。血縁を望む声が大きく今回の転校生二人は数多い候補から厳選したエリート。容姿、血筋、実力ともに一級品。ミウにとっては先方からの刺客だ。双方ともにそんな事は知りもしないが。ちなみにノイルの両親がなぜ、敬われるのかだが、過去に類を見ないほどの害獣の繁殖期があり二人の功績がなければ今存在する国の七割近くが現存しておらず、他にも飢饉など災害の時にお世話になっており、頭が上がらない。また、生来二人の地位が高かったからだ。余談の余談だが、ノイルの父親の種族は男淫魔つまりインキュバスである。
告知の場にはミウも当然いたが、彼の種族は気位が高いから講義をちゃんと受けてくれるか心配だわと嫌に教師が板についてきた、そういう思考をしていた。後にさらなる苦悩の原因となる時期外れの転校生に警戒することもなく真面目に教師をしていた己を恥じ後悔することになるのだが別の話だ。
渦中の人物、ノイルは非常に苛立たしげだった。何せ邪魔が入るのだ。やって来る邪魔者が何か出来るとも思っていないし何かさせる気もないが、何かあれば事だ・・・なんて不安を抱く自分に苦笑もしていたが。かつての自分は何かに不安を抱く事はなかった。大抵の事は困ることなくできた。こなせた。だから完璧と称される事もある。そんな自分が彼女に出会ってからというもの、どうだ。不安だらけである。だが、何があろうとも逃がすつもりはない。
「覚悟、してくださいね」
ノイルは笑った。




