冒険者とゴスロリと陰謀(?)
件の事件(?)から数日、一応は約束を交わした故にエクシリアに留まっていたミウは弟、正確にはエクシリア国王としての弟に城へと召喚された。ミウとて高ランクの冒険者で貴族の依頼を承る機会も多少はあり、依頼者に呼び出される事はあったのだが弟から、というか一国の王からの呼び出しは未だかつて経験になかった。さすがに普段の服装で行くわけにも行かず、礼服を新調する事となる。一般に服装について依頼者側が冒険者に求める事は一切ないのだが、場所が場所だ。王城ともなれば、大半が粗野な荒くれ者の冒険者でも気を遣う。中には普段着で向かう猛者もいるが極少数である。
ミウと弟に血縁関係はない。お世辞にも尊敬できる人物ではない父親を見て育ち、人柄は十二分に理解していた。あれと血縁関係があると思うと虫唾が走り弟と血縁がないのが少し残念だ、というのがミウの本心である。重ねて言うようであるが、元から弟の事を嫌っては居らず好ましかった。助けようとして魔法を放つ、そんな頓珍漢な行いもしたが自己満足に過ぎずとも幾度か姉らしい事ができて良かったと冷静に過去を振り返られる。殆どの身内が殺された時、特に思う所がなく自分は冷たい人間のように思えたが血縁がある以外に彼らに対して結びつきがあったかと問われると否定しか出来ず、弟だけが私にとって唯一の家族だったと。そう納得した。
結局何が言いたいかと言うと、フィルとは血縁関係がないから髪や目の色が違うと言う事だ。金の瞳に緋色の髪。少しクセのある髪だが逆に柔らかさが出て手触りが言いとミウ自身は思っている。これは事実。目も金塊や華美な装飾品のような金銭欲に直結するものではなく何処となく柔らかい感じの金色だと思っている。非常に抽象的表現だが、これも事実だ。見た目も当初の(初登場時第二話)イメージのような気の強い感じではなくむしろ穏やかそうだと自負している。若干吊り目で端正だが基本無表情なため、勘違いである。無論気も強い。
ここで、あれと思うものもいるだろう。少なくともミウは金髪だったはずであると覚えている者はそう言うはずだ。これについては精霊が関係している。精霊とは単一の属性を司る純粋な魔力生物で世界の何処にでもいる遍く存在だ。そして、彼らはエルフと契約し彼らに力を貸し与え、その結果が精霊魔法である。彼らは基本的にエルフ以外の種族とは契約を結ばない。それは紛れも無い事実で勿論、ミウも契約はしていない。しかし、彼女は精霊達に気に入られた。性格には炎の精霊に。彼の属性は激しい気性を好む。同時に綺麗な心、単純に欲望塗れでなく悪行を働いていないか悪行について酷く後悔し悔い改め、善行を積む者の心をそう表現するらしいが、それをミウは持っていた。
そして、精霊達が尤も気に入ったのがミウのその目だった。綺麗な淀みない緋。元々、赤系の色を好む精霊ということもあり尋常ではない関心の持ちようだったと当時、言葉に居たエルフの知り合いは語った。その結果が色の取替えだ。事例としては初めてだが、似たようなものでエルフのある少年は闇の精霊に気に入られ髪が真っ黒になったというものがある。これから、精霊は人間に干渉し目や髪の毛といった限定的部分に対して色を変える力を持つとされるようになった。当然、眉なども緋色になっている。また、炎の精霊に気に入られるって事は火の適正も高いのでは、と知り合いのエルフに言われたミウは早速試し、以後火の属性は使っていない。
理由は光よりも火の適正が高く、その程度は火を司った九大公爵家の当主を凌駕するレベルであり異常な適正の高さ故に初級魔法で大事になり掛けたため、周囲に人がおらず木の少ない場所で二級以上の害獣に遭遇した場合のみ使用すると制約を掛けている。さて、わざわざ炎の精霊の件を出してきたのには理由がないわけではない。服の話から血縁関係、髪の色の変化、炎の精霊、魔法適正と大分、脱線したが本来は服の話だ。新調といっても急な詔勅で時間を掛けられず、失礼にならない程度の質で地味な色のドレスにした。正しくはしていたのだが、いざ着付けを始めようとクローゼットを開けてみれば、ドレスの色が、というかドレスそのものが変化していた。言うなればゴスロリである。ご丁寧に靴などもフルで完備されており周囲から感じる気配を察するところ、炎の精霊だとミウは結論付けた。
仕方無しと言う事でゴスロリ(凄くふわふわしてる)に身を包み、鏡の前に立ってみる。
「微妙に似合ってるのが腹立たしいですね」
しかも、生地の質感が一度だけ扱ったことのある第二級の害獣黒皇狼の毛であったり白色部のものは黒皇狼と双璧を成す白皇狼の毛だったり何者かの作為を感じる。装備として見ても、ふわふわした見た目の割に動きを阻害せず材質や出来上がりからして逸品だ。しかしまあ、いざ登城してみれば弟と義妹に爆笑される始末。頭が痛いと眉間を押さえるミウの姿が謁見の間にあった。尤も、さすがに王と王妃。さっと表情を正す。
「王様、此度はどうのようなご用件でしょうか」
「義姉さんにそんな堅苦しい態度取られたら、私泣いちゃう」
「姉さん、俺の可愛い妻を泣かさないでくれよ」
「真面目にしなさい!・・全く、で何?」
「エクシリア魔法学園で講師をしてほしい」
「お願い?命令?」
「できれば、命令の方だ」
「理由を聞いても?」
「光属性の授業担当の教員が先日、怪我してね。三ヶ月くらい療養が必要になった。単位数も受講者も少ないけど、受講者は全員が優秀な人材だから授業はしなければならない。そこで姉さんに白羽の矢を立てて見たら、向こうもお願いできないかということでね」
「フィルが話を持ち込んで相手が了承したのね。給与は?」
「通常の三倍ってことで契約してる。尤も、姉さんの三か月分の稼ぎと比べると全く足りないけれども」
「別にお金には不自由していないし分かった。その依頼謹んでお受けするわ」
暫くの間、談笑が続きミウは家へ帰っていった。王は謁見の間に残り次の謁見者と向き合っていた。王妃は自室に戻っている。
「こういう遣り方は好きじゃないんだけどな」
「すいません」
王と対話するのはエクシリア魔法学園生徒会長ノイル。
「勝手な改変に時間確保のための排除、極め付けにゴスロリと来るか。全く、学生最強が聞いて呆れるよ」
「申し開きもないです」
「全然反省してないな・・・そんなに気に入ったのか?」
「最高です」
「本来は弟として止めるべきなのだろうが、まあいい。姉さんには気の毒だが、君らは粘着質だ。間違って害されでもしたら国を幾つか消す事になる。幸福にする事が第一条件だ。あと、姉さんは初心だからな。あんまり弄ってやるなよ、そそられるのは分かるけどね」
「はい」
「しかし、敬語が似合わんな」
「全くで」
両者は語り合う。とりあえず、ミウには困難が待ち受けている。そう、お膳立てされ準備は整ってしまっていた。




