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闇を背負う者、破壊を有す  作者: 松佐
外伝,冒険者ミウ
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冒険者は料理を学んだ

定食屋、その厨房。そこは紛れもない戦場だった。


「炒飯大盛り二人前、お待ち!」


「ミウちゃん、生姜焼き定食三人前頼むよ」


「了解!」


昼飯時。エクシリア王都に店を構える、とある定食屋。そこにミウはいた。着々と発展を進めていくエクシリアは領地を当初の十倍以上に拡大させつつも王の統治が行き届き、治安も大陸随一という現在一番勢いのある国であり同時に食の革命を起こした美食大国とも呼称される。当の食の革命者ことエクシリア王妃リオンは愛する夫に美味しいものを食べさせたい一心で自らの魔法属性混沌を用い破壊神であり、かつての邪神教国の神教対象である世界の創世神が世界を作る傍らで全ての破壊と全ての再生を繰り返し出来上がった全ての物事が記され、全ての物事に通ずる混沌の泉にアクセス。


そして、異世界の料理の知識を採集し記憶。従来の料理は焼くことを主流に煮込むという概念を用いた料理はスープなどのみで肉や魚を煮込む料理は辺境でしか口にできず言わば異端状態。故に油で揚げる、蒸すなどの調理概念もなく、また調味料も塩、胡椒、砂糖などを振り掛けることしかせず、タレなんていうものも貴族お抱えの料理人で作ろうとした人物もいたが、不評で以来作ろうとする者は変わり者とされ、活躍する機会もなく表の世界に出ずに埋もれていった。


また生姜や山葵も味の強烈さ故に最初の段階で料理の研究対象から外された。その実、健康にも味付けにも非常に重宝できる食材なのだが、リオンが俗に言う革命を起こさなければ、料理に活用されることもなかったかもしれない。今やエクシリアは食文化の最先端。中でもミウの働く定食屋は王妃より伝えれた料理や料理法の中で一般向け且つ材料が安価なものを扱い、レシピも多少お高いが販売している人気店だ。そんな定食屋に冒険者のミウがいる理由は二ヶ月前に遡る。


ミウは非常に悩んでいた。昨今、貴族出身の女性は着替えも手伝いを必要とし掃除など一般的に雑事とされる事は勿論、家事が一切できない傾向にあった。ミウは一応貴族出身で、しかも位としては王家に告ぐ公爵家。神童と謳われる魔法の才を持ち、可愛がられて育った。そういう人物だ。しかし、一般的な貴族、また貴族女性とは価値観が違う一面もあり着替えは自分で出来て当然。平民が出来る事をその模範たる貴族が出来なくて何とする、という思いで父と母が遣わせた侍女に手伝わせはしなかった。


掃除、侍女は服が汚れます。家族はお前がそんな事をする必要はない、というが将来的に魔法学園に入り冒険者の依頼を体験する時が来る。基本的に日帰りだろうが、服は汚れるし戦闘で敗れもするから掃除を反対される理由ではない(かなりの極論だ)、と散々理由を立てて反対を押し切ったのだが、二十歳になったミウは単純に色んな事を体験したかったのだと振り返る。


そんな幼少からの経験もあり魔法学園入学後、初めての依頼では驚かれた。貴族は身の回りの事を従者にさせるのが周知の事実でありミウのような上級貴族の娘なら、当然そうだと周囲は認識していた。しかし、それは覆される。ミウが初めて受けた依頼は複数人で受ける日帰りできないものだった。

街も依頼地付近になく、当然野営を余儀なくされた。貴族と平民の混成チームだったが野営の準備など貴族は休むだけで平民に押し付ける。それが普通の風景だった。だったのだが、平民の生徒達が不平を口にしつつも野営の準備に取り掛かろうと手頃な場所を探し見つけた先には既に野営の準備を始め、荷造りしているミウの姿があった。


好奇心旺盛で何事も自分で試さずにはいられない気質だったミウは将来を想定して野営の準備の練習もしていた。この世界に異世界である地球にあつようなテントはない。木の枝や幹、蔦など自然のものを骨組みとして利用し、雨風を凌げる様に加工された獣などの皮を骨組みに被せ固定するというもの。普通は獣の皮というだけで忌避するのが貴族だ。その癖、上等な毛皮とみれば喜んで自分から剥ぎ取りに行くのだから理解が難しい。


貴族が平民を使わず野営などを自分からやり始めるのは二年の後半から、現実というものを経験し認識し始めてからだ。そうして、過去の自分を恥じて野営の準備をしてくれた同級生にお礼回りをする貴族も少なくはない。尤も中級階級以下とエクシリア王が在学中に度々言っていた良識的な一部の上級階級に限られるが。そんな中で手際よく作業を終えたミウは異端だった。貴族としては。逆に平民の生徒からすると立派な人もいるなぁという感じだったが、平民から見た貴族はどれほど生活能力がないと思われているのか興味は尽きない。


かなり本筋から、それた。話を戻す。とりあえず、ミウは困っていた。身の回りの事は大抵出来る。出来るのだが、私は料理をした事がないと。貴族は専属の料理人がいる。だか、ミウは貴族を辞めた身だ。ここでだったら定食屋で食えば良いだろ、自分で作らなくても、と言うところだが、ミウの真意はそこではない。ただ単純に結婚して料理が出来ないのは恥ずかしいし胃袋はがっしり掴んでおきたいという点に集約する。まあ、過分に乙女(?)な理由である。そこでミウが弟子入りしたのが期間限定の職場である定食屋。四十歳ほどの夫婦が営んでおりエクシリアで仕事があった時は毎日のように足を運んだ店。


夫婦とも顔見知りでいわゆる常連と言う立ち位置だった。最初はミウの申し入れに戸惑った夫婦だったが快く受け入れ、元々飲み込みの早かったミウは一ヶ月で免許皆伝(言葉の綾である)となり、そのまま感謝を述べて何処かに行くつもりだった。しかし、厨房を仕切っていた奥さんが不慮の事故で全治一週間ほどの怪我を手に負ってしまい、その間の代打としてミウが抜擢されたわけだ。それも、今日で終わりだが。


「ありがとね、ミウちゃん」


今日の営業時間が過ぎ店仕舞いをするミウに定食屋の奥さんが声を掛ける。


「いえ、みっちり指導して貰ったお返しです。気にしないでください。それに自分の料理を人に振舞う機会を与えて頂いて奥さんが怪我をしているのに不謹慎ですが、感謝しています」


「・・これ、一週間分のお給金ね。渡しておくわ」


「貰ってもよろしいんですか?」


「ミウちゃんが働いて稼いだお金だよ。遠慮する事ないわ」


普段から自分で稼いでいるミウだが、今回は達成感が身に染みた。


「本当にお世話になりました」


「いつでも食べに来てね、ミウちゃん」


「はい」



さて、こんな感じのミウが過去にエクシリア王ことフィルに対する言動と魔法をぶっ放していた経緯だが、あの追いかけっこは基本的に対象の意識が飛ばなければ続きフィルは打たれ強くいじめっ子の魔法では威力が中途半端過ぎたからで、ケリは早くつけた方が外傷が酷くならないだろうという推測から。言動は最低な行為をしている自分が優しさを見せるのは間違いだから、という思いがあったから。そう思いつつ、お菓子をあげたりお姉さんしてた部分もある。

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