終わりへと
懸案に関する対応だけは抜からず行ってきた。邪神教国の位置は把握している。そもそも、把握するまでもなく、当然の場所に当然のごとく存在していた。大陸で最大の霊峰、かつて破壊神がその身を封じ転じてできた、そんな伝承が語り継がれている辺境にある巨大な山脈の麓。辺境ゆえに大国や小国からも見向きされず、忘れ去られていた場所。それがやつらの総本山だとフィルは友人に語る。一刻を争う事態であるのには何ら変わりないが、フィルの配下、優秀な者ばかりの特殊部隊が教国への転移魔方陣の形跡を発見したことが知らされていた。形跡だけであって魔方陣自体は消し去られた後であったが、消し去さるだけでは処置として不十分の一言に尽きる。
魔法の使い手として十二分の実力を持っている者は転移魔法の行使された形跡から魔力の残り香を感じ取り、その魔力が描く道筋、つまり転移先を知ることができる。要は逆探知だ。後は魔方陣を書き直し、魔力の残滓を辿り、魔法を発動させるだけでいい。ドラマなんて要らない。即座に叩きのめし、塵さえ残さず消し去ってやる。配下に案内された魔方陣跡で逆探知を行い、転移魔法の転移先の座標を読み取り、一瞬で魔方陣を書き上げる。元より、敵の杜撰な処理のおかげで大した労にはならない。魔方陣の型がそのまま残っており、魔力を流し込み定着させるだけでよかったのだ。流行る気持ちを抑えながら転移魔法を発動させた。魔法は正常に機能し、目的地へとフィル達を転移させた。
到着点は小高い丘で教国の全貌を見渡せた。情報通り山脈の麓に居を構えた高めの防壁。中に広がるのは一見普通の家々、建築物の大群。そんな中で一番の異彩を放つ巨大な建築物、外観は一般的な教会のようで、どこか禍々しい雰囲気を漂わせ、現在進行形で強大な魔力の気配が膨れ上がっていく。様々な性質の魔力が入り混じったぐちゃぐちゃの魔力は尚も肥大を極め、同時に禍々しい気配が溢れ出して来る。そして、地響きに似た音が、生命の脈動、心の蔵の鼓動を思わせる音が大気を揺るがした。邪神復活の兆し、封印された邪神の目覚め。それは愛する者の命の危機に相違ない。愛する者を攫われた。三人は協調性など皆無で脳が沸騰するほどの激しい怒り、憎悪を滾らせつつも冷静な思考を有していた。ここからは壊して壊して取り戻して壊すだけ。
どれだけ常識ぶっていても三人の男の根底はそれほど異なるものではない。愛する者に執着し愛する者を害す者を全て破壊する。愛する者が全ての中心であり、愛する者がいれば、それでいい。他のことはどうでもいい。愛に狂った狂人、愛に飢えた獣。それが彼らの本能であり根底であり存在の在り方。故に邪神教国の取った行動は、例えそれが彼らの悲願であっても実行するべきではなかった。愛に飢えた獣の咆哮が教国を揺るがす。
襲撃。狂いリミッターの外れた獣たちの一撃は教会以外を容易く崩壊させる。長きに渡り邪神復活のみを悲願とし世界から邪と断じられた人々が住まう国と歴史に、ピリオドが打たれる。
ふ、筆が進まない。スランプっぽいかも。まあ、スランプとかいえるだけの実力も何もあったものじゃないですけれども。




