破壊の使徒の友人(男性陣)の戦い
ウィルガの場合。
ウィルガは怒っていた。寧ろキレていた。否ブチギレていた。小太りの気持ち悪い小国の王子が大事で大切で愛しすぎる最愛のエミリーを妾にするなど寝言をほざいたからだ。エミリーは間違っても妾などではなく本妻であって然るべきである。それ以上に漸くエミリーと付き合えるようになった自分から彼女を奪おうとするキモい男が許せなかった。例え神が許してもウィルガは許すつもりはない。幸せの絶頂期を邪魔されては堪らないし、幸せの根源である彼女を奪われるなんて以ての外である。
天の采配か第一回戦の相手は憎きあの野郎だ。俄然やる気もである。ウィルガのやる気は過去最高潮といってもいい。相手の名はどうでもいいが、岩属性という特殊属性を持っており国内ではちやほやされているらしいと何処から仕入れたのか不明だがフィルから情報がもたらされた。一も二もなく信用する。フィルからの情報を鑑みるに相手は相当プライドの高いタイプで典型的な貴族である。岩属性は簡単に言うと土属性の派生系であり、土属性よりも魔法の強度や硬度が上がり、影響を及ぼす範囲絞られたことによって威力も上昇しているが基本はやはり土属性。折角だ、と口元に笑みを浮かべたウィルガは呟く。魔法ごとプライドも切り裂いてやる、と。
ウィルガの試合はフィルの後で参考にしようと中止しつつ観戦した。一言で言うなら一方的蹂躙だったのだが、酷く参考になった。あれだけ徹底的にやれば完璧だなと、この瞬間にウィルガの対戦相手の運命は決定したようなものだった。審判の合図で戦闘を開始する。
「エミリーは僕のものだ、邪魔をするな」
このセリフにエミリー本人が身震いして嫌悪感を全開にしている事実に気付かない。相手の方は自分に好意を持っていると何故か勘違いしているようだが、現実はいつも当事者の幾人には厳しいのだ。フィルとしてはそのある意味ポジティブシンキングとも取れる奇妙な感受性に賞賛すら覚えるが、それは哀れさ故か。
かくして威勢良くウィルガの金銭を逆撫でする言葉を容易に吐き出した世間知らずの坊ちゃんは一瞬にして直径一mの岩球を複数つくり出し、ウィルガに放つ。大質量を伴ったそれは一般人をグシャリと潰してしまうには十分過ぎる運動エネルギーと硬度を保ちウィルガに殺到する。さすが代表選手に選ばれただけあり、魔法の構築速度は中々に早い。
「邪魔はそっちだ」
対してウィルガは焦った様子もなく平然とした面持ちで何気なく腕を一閃する。正確には視認できたのは一閃のみ、その実一瞬で数十回斬っている。結果として岩球は粉微塵に切り裂かれ、風に攫われていき、無傷のウィルガが立っていた。相手はそれが信じられないらしく手をワナワナと震わせて仕切りに馬鹿なと呟いている。自信より優れた者を認められないのも典型的貴族の若かりし頃のそれこそ典型だった。
「今度はこっちからいくぞ?」
狂気的な殺気を向けられ、正常な思考を取り戻した相手は幾重にも岩の壁を重ね合わせて防御壁を築き上げる。下級ドラゴンのブレス程度ならギリギリ防げる年齢にしては優秀な防御魔法だったが、斬撃属性の前には紙に等しい。ウィルガは相手の両腕を切断した。断末魔のような悲鳴を上げる無様な物体を前に無感情なウィルガは観客席で待つ最愛の許に戻っていった。
短いですが、どうかお許しを。最近、アイデア不足なんです。それに、この大会編は基本フィル達の無双なんで、どうしても書きづらい。少しフィル達のスペックを高く設定しすぎたので、強敵ってイメージが分からないんですよね。




