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闇を背負う者、破壊を有す  作者: 松佐
破壊の使徒
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破壊の使徒の友人たちの最終調整3


ニーナの場合。

ニーナが討伐対象として選択した害獣は第三級のビック・スネーク。第三級にランクインした理由は個体差はあれど、超ド級のデカさの巨体を保持しているからだ。外皮もそれなりに固く、質量も大きさに見合ったもの。重さはそれだけで驚異なのだ。全長は平均で五十mに及び直径六m程度の肉体を持つ。ビック・スネークが歩みを進める度、大地が震えるとまで言わしめる巨大さだけが取り柄の害獣だ。重さ、大きさ以外は他の蛇と相違ない。が、重さと大きさだけで危険度は数十倍の域を軽く超越する。


寝返りを打つだけで小さな村が一つ消えたという報告も歴史書に残っているほどだ。もっとも、棲み家の外に出ることが少ない害獣である。今回、ニーナが受けたのは外に出たビック・スネークの討伐依頼だ。本来、その大きさ故に生命力も卓越しているビック・スネークは数十人単位の冒険者や狩人が協力し合い生命力を削り切ることで漸く殺すことのできるタフな害獣だ。普通、一人で討伐を請け負える相手ではない。しかし、ニーナはいわば火力専門及び火力特化の魔法使いだ。正確には火力特化の精霊魔法使いだ。


一対多の戦闘を得意とする戦術級魔法使いのように火力の馬鹿高い魔法を得意とするからこそ他の冒険者と組んだ場合は邪魔になる。気兼ねなく発動させなければ及ぼす効果も半減というものだ。何より彼女の契約している精霊達は非常に気性が荒い。精霊としての立場的に冷静であるべき方々であるが、嫌に好戦的なのだ。しかも、ニーナを溺愛しており下級の精霊など指一本たりとも触れることを由としない。例え、不可抗力であろうと触れてしまった残念な輩は精霊といえど抹殺されている。


精霊のコミニティーでも精霊同士の殺し合い、ましてや殺害など御法度なのだが、ニーナの契約精霊の方々はそれが許される地位にいるのだ。詰まる所、各属性の精霊王。そのため付いたあだ名が精霊の愛子でウィルガと同じような境遇にあった。学園で友人達と会うまではニーナも悲観的だったが、今はすっかり改善されていた。契約精霊の彼ら精霊王も多少の罪悪感があったので、現在の状況は心苦しさが排され、とても居心地がよく溺愛度が一層強化されたがニーナも気にしてない。そのせいで、溺愛度は鰻上りなのだが、ニーナが問題視していない。そんな契約精霊を持つニーナだ。ビック・スネークを焼き払うのは朝飯前だった。


ただ、ビック・スネークを葬るための手段が些か行き過ぎだった。まず、相反する属性同士を力技で融合させ自然の理を無視する謎のエネルギー別称ダークマターを精製し、それらをさらに融合させた混沌に最も近いそれを惜しげもなくビック・スネークに放ち、見事に消し飛ばした。余波で数十mに渡って焦土と化したが、細かいことは気にしない。


エミリーの場合。

エミリーの討伐対象は半精霊のハーフ・エレメント。正確には自然に遍く魔力の集合体が意思を持った存在である精霊が様々な理由で堕ち、仮初の肉体を得たものだ。精霊の有する決して少なくない膨大とも言える魔力を悪意を持って行使する、それがハーフ・エレメントだ。個体数が少ないことが唯一の救いであり、第二級と第三級の中程の危険度とされている。特徴として半精霊であるため確固たる肉体がある通常の害獣と比べ、肉体による打撃など直接攻撃が通りにくく、対処方法は専ら魔法攻撃だ。


しかし、魔力の集合体だけあって魔法には敏感であり発動前に逃走されるケースが多い。ただ危険と見做されなければ、逆にこちらが嬲り殺しにされてしまう。相手によって態度を変える小物臭満載な害獣だが、悪意の塊らしく弱者相手には容赦がない。完璧な悪役だ。元々、精霊がハーフ・エレメントに堕ちる条件として強大な悪意との接触が挙げられる。悪意ある行動を取るのは道理なのだ。


故に非常に危険性の強い害獣だ。個体数は少ないといったが、目撃証言が上がれば即刻討伐隊が結成されるレベルの害獣だ。危険度が高い害獣でも普段は温和で人的被害を出さぬ害獣もいるからして、ハーフ・エレメントの悪辣さが際立っていると思われる。歴史に残っているだけでも国が数個消されているし、ギルドが過剰な戦力を投入したがるのも仕方がない。習性として澄んだ魔力の周辺に群がる、とされているが、この場合の澄んだ魔力というのは社会に毒されていない年端も行かぬ純粋さを持った人間のことであり、詰まる所は子供達のいる場所だ。


ハーフ・エレメントの出現が確認されると出現報告が成された地点から一番近い人口密集地域に強制的に冒険者・狩人が徴集され送られる。拠点防衛のためだ。特に守るのは子供達が集まる遊び場だ。守護を目的としているとは言え美人のお姉さんならともかく強面のおっさんに囲まれて泣き出す子供が続出するのはご愛嬌といったところか。冒険者及び狩人からすれば、生と死の狭間にいるというのに暢気なもんだと少しばかり羨ましい。


実情、一般的な冒険者や狩人が単体で討伐できるのは第四級までだ。それも相当な無理をして漸くであり、今回のようにハーフ・エレメント相手に集団でとは言え立ち向かう場合は本気で死を覚悟する。一流の、本当の一流の域に達せる人間は残念ながら全体の中でも極少数であり、災害級の危険性を誇る害獣相手に生き残れる可能性は低い。


そして、時は訪れた。薄い酷く薄い水色の人型が現れた。ハーフ・エレメントの元となった精霊の属性は水属性のようだ。半精霊は姿形を自由に変えられる。そのため、この表現は正しくないがエミリーと同年代の少年と同様の背格好で不思議と顔の輪郭はハッキリとしていた。その口元が醜悪に歪む。虐げることを至上とする快楽殺人犯さながらの笑みというには残忍すぎるそれは否応なく場の空気を圧し、冒険者と狩人達は怯む。緊張に得物を握る手には汗を掻いている。


圧倒的な悪意を発する敵を前にエミリーの心は凪いでいた。波紋一つない。ただ静かに敵を見据える。深呼吸を一つ、エミリーは疾走を始めた。硬直する場の中で一人突出する。同時に得意とする幻影魔法を発動。それは幻影魔法の初歩中の初歩で自身の姿を分身させてみせる魔法。ハーフ・エレメントはあからさまに戸惑いを見せた。あちらこちらを見回しては攻め倦ねている。四方八方に現れる幻影に対処しきれていない。


エミリーの幻影魔法は相手を撹乱するだけでは終わらない。それがハーフ・エレメントが攻撃を開始しない理由。彼女は単純な幻影魔法であっても相手の感覚にまで侵食し正常な判断力を失わせる。敵の持つ純然たる悪意さえも捻じ曲げ破壊衝動を偽るほどの圧倒的な影響能力。種族内ではすっかり異端扱いを受けていた。つまり、彼女も含め友人達は何処か規格から外れた者達、ある意味同族だった。どうでもいいが。


ちなみにエミリーが異端扱いされる理由は並外れた影響能力ではなく、彼女の魔法が幻影でありながら幻影でないことだ。平たく言えば、実体を持つのだ。彼女の幻影は。幻影は徐々に敵の体力を削っていき、エミリーは止めの切り札をきる。幻影はあくまで魔法であり、実体を持つ時点で魔力の密集体であることがわかる。それは元の魔力に還元可能であるということに他ならない。エミリーは幻影を作る際に魔力を消費したわけではない。魔力を使い幻影を作り出したのだ。瞬間、幻影だったそれらは魔力の奔流に変わり、半精霊の悪意に染まった魔力を洗い流した。

すいません。校内マラソンやその他の理由で更新が滞ってしましました。

そして、ステップを次に持ってくために少し短縮しました。


余談。リオンはリトル・ドラゴン狩りで最終調整を終えました。

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