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闇を背負う者、破壊を有す  作者: 松佐
破壊の使徒
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破壊の使徒の大会前の最終調整


大会を一週間後に控え、代表選手達は最終調整段階に入っている。無論、お馴染みのメンバーも内に含まれていた。日々、オーバーワークにならない程度の厳しい鍛練を積み重ねてきた。その集大成、その結果を見せる舞台が差し迫る緊張感で鍛練は一層内容の濃いものになっている。当初、心配されていた一年生の新人戦の部もフィル達のお陰で懸念はなくなった。


そして、今日は最終調整として各学年の代表者・・特に個人戦に出場する選手に学校からクエストが与えられた。内容は自信が今までに相手取った中で最高ランクより一つ上の害獣を狩ってくること。もしくは最高ランクの害獣を十体倒すこと。勿論、単騎討伐である。


ここで困った顔をしたのはフィルである。一年生組の他のメンバーは偶然にも四級までの害獣しか討伐したことがない。リオンも然り、強さ的には問題ないが二人の幼馴染が死んだ後、実家の命令で渋々軟禁状態の生活に戻ったせいで機会がなかったのだ。クエストの達成条件はフィルを除く五人は三級の害獣討伐で決定したわけだが、フィルはそうもいかない。


彼が今までに討伐した最高ランクの害獣は第一級でも最上級の強さを誇る全長五十mの黒龍、大陸に住まう人類の中でその名を知らぬ者はよっぽどの田舎者でない限り存在しないとまで言われた知名度を持つ黒龍王なのだ。あれ以上となると、それこそ封印された下級の悪神レベルでないと条件には当てはまらず、さらに第一級害獣は極端に個体数が少ないのだ。


それ以前に第一級ともなれば、人語を介し賢獣・神獣の類が大半なためにおいそれと討伐できる相手でもない。故にフィルが最終的に選んだのは嘘をつくことだ。単純に一級ではなく二級を標的にする、それだけの話である。討伐対象は凶鳥である黒い鷲、今や一国の王となった身である。大陸の平和を守る目的で結成された主要な国々による同盟に名を連ねた手前、最近過激化している特殊属性持ちの人間を攫う例の騎士団に意趣返しと牽制、そういう意味合いを込めた行動だ。


黒い鷲はその大半が悪神を封印した名残で空間が歪んだ場所に巣食っている。通例なのか封印場所は基本的に火山の火口だ。それは灼熱地獄で持続的ダメージを与え、少しでも封印期間を延長せんと昔の人々が考え考え尽くした知恵の結晶だ。いくら神と言えど、創世神クラスでなければ世界より溢れ出るエネルギーを完全に無効化は不可能。創世神クラス以外の神とは創世神クラスの神々に創り出された世界によって存在を定義され産み落とされた者や人々の思いの結晶が祀られ神格化した者、常軌を逸した力を持った者が昇華した存在などを言う。


母であり父である世界に逆らえない。抗いきれない悪神とは、そんな存在だ。悪神の定義は信徒を裏切り、狂い外道に落ちた神を言う。彼らには確固たる肉体が有り、その存在は数多くの人間に認知されている。彼らが狂った時、対処するのは当然認知していた人間達、中でも祀っていた者達だ。だが、道を踏み外しても神は神、さらに外道に落ちることで制約が緩和され権能の効果も増大している。対処しきれない場合の方が圧倒的に多い。その場合に対応する組織もちゃんとある。神殺しの咎人、という組織で組織の人間は神を封印する術を代々受け継いできた者達で構成されている。


彼らの封印術は芸術の域に達する繊細なものだ。幾つもの複雑な封印術を幾重にも折り重ねた寸分の狂いも許されない。そんな封印術でさえも悪神の力は完璧に覆い尽くせない。抑制しきれない。一説では黒い鷲は漏れ出た悪神の力に普通の鷲が取り込まれた姿ではないかと言われている。故に凶鳥とされ黒い鷲が通った後は不幸が蔓延するのだと。あながち、間違いだと否定はできない意見ではある。先に示した通り、火口に封印されるのは封印されし悪神が世界に生み出された者で火口より流れ出る溶岩はいわば世界より噴出したエネルギー。親に干渉されぬ子はいない。


だが、逆に子も親に干渉は可能なのだ。もしも、黒い鷲が悪神の力の一端に取り込まれた存在なら不幸という名の世界に対する干渉も不可能ではない。よって、黒い鷲の討伐は間接的に世界を救うことにもなる。未だ自身の気持ちを正確に認識していないフィルはリオンと別行動を取るのが何だか不安であったが、リオンの実力は折り紙つきだ。フィル自身も太鼓判を押している。


それに今はまだ大丈夫だと割と高確率で当たる勘が、今はまだ、と自身の不安を喚起する内容で告げているのだ。もし、リオンの身に何かあった時、自分から離れていくと仮定して考えると堪らなく嫌だった。何より、自分から離れることが許せなかった。ところで。知っているだろうか?この世界を創りし全ての根源たる破壊神は世界最大の霊峰で長い長い眠りについていることを。彼は紛れもない創造神クラスの中でも最高の最上の最強の権能を持つ神だ。


その神は自ら眠りについている。邪神と化した自らが世界を滅ぼさぬように自身を封印し、内に潜む邪悪を浄化するために。彼の神が唯一愛した混沌属性を持つ人間の女性、全てであり全てでない・無であり有である・死であり生である矛盾した混沌を抱えし女性、二人は神と人間という壁を越えただただ純粋に愛し合い共に過ごしていた。変動せぬ日常に絶望していた破壊神に訪れた幸せ、初めて感じた幸福という感情の象徴、そんな女性を魔法がまだ歴史の表に出ず、白兵戦が戦の常道だった時代に大陸に覇を唱えしガルズという愚かしい人間ばかりが集まった愚かしい大帝国は何をとち狂ったのか供物として捧げ自らの願いを破壊神に叶えさせようとした。


破壊神が最後に見た女性は見るも無残で彼は狂った。恨み、怒り、それは感情の爆発だった。大帝国は一瞬で塵と化した。彼はひたすらに慟哭する。女性を殺した人間を恨み、その行為に怒り、何よりも自分を置いて逝った女性を、自分から離れていった女性を許せなかった。狂愛だ。互いの全てが相手のもので彼は女性のためなら永久に続く命を途絶えさせても良かった。彼の感情の爆発は、女性が残した最期の言葉である簡潔だが、けれど何より明確な謝罪による遣る瀬無さ、神たる自身の不甲斐なさに起因する。彼は女性と愛し合った時から神として超常の存在として、どこか狂い始めていたのだ。


最後の理性を振り絞り、かつて大帝国だった場所に天高くそびえ立つ霊峰を創り上げ、自らを封印したのだ。女性の愛した世界を壊さぬために。その思考は既に神としての破綻だった。だが、女性を自然の理に逆らい蘇生させなかっただけでも神としての自覚が残っていたことを示している。一度、創った世界の中では如何に創造神であろうと制限を受ける。それに逆らえば下手をすると世界は崩壊する。幾多の世界はどれもそのようなものと定義され創造されている。


自身の属性に関係の深い破壊神のことはマメに調べていたフィルはどうも、狂い始めた後の破壊神の性質をどうやら引き継いでいるらしい。破壊や再生といった特殊属性の中でも特異な属性はその根底に神の存在がある。破壊神の愛した女性の混沌属性も破壊神が創造を始める前に暇を持て余し、元々存在した概念を壊し再生しを繰り返し、概念というそれ自体に付随する事象全ての根底を結果的に混ぜ合わせて出来たもの。それが混沌だ。混沌の性質を持っているだけで破壊神にとって女性は近しい者だったのだろう。なにせ、自身の創り出したものを司る者だ。性質的にも理解し合えたに違いない。人は得てして自身の属性に引きずられる。属性とは自身の性質と同義なのだから。


故にフィルは破壊神と同じ性質を、大事な存在が手から離れることを良しとしない圧倒的で純粋な独占欲を持っている。本人はその辺を認識してはいないが、時が来れば自ずと分かるはずである。


同じ頃、黒い鷲を象徴とする騎士団は否、それらを束ねる邪神教国の教王は血眼になって探していた。自ら閉じ篭った邪神(破壊神)を復活させるためのトリガー、混沌属性を持つ女性を。やはり人間は愚かしい。邪神を崇める者共の長が邪神のことを一番理解していなかった。邪神の本質・・属性を持つ人間がいることを。属性とは本質、本質とは属性、邪神の意思を心に体に刻まれし者が再び愛しき存在を殺させるわけなどありはしないというのに。


何より邪神の属性を持つ当代の若者は容赦という言葉を知らぬ冒険者中最高の知名度を誇る[国落としの大虐殺者]の二つ名を冠するフィル・ランス・エクシリア、破壊神のように塵を残してくれるような優しさなど一切持ち合わせちゃいないそんな人物だ。

ダメだ、このままじゃ大会後直ぐに物語終了まで直行コース。アイデアがアイデアがないんです。閑話休題。


どうでしょう?破壊神について少しばかり描いたのですが、何か狂ってるというより病んでますよ?・・・・・・病んでる神様って、ある意味最高に厄介じゃね?

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