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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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初めての世論調査

選挙まで残り一か月半。

その日の朝、ウス・ライが息を切らしながら事務所へ飛び込んできた。


「出ました!新聞社の独自世論調査です!」


私は机の上へ広げられた新聞を見る。

政治欄には大きな見出しが躍っていた。


『初の世論調査 各党の支持率を発表』


私はゆっくり記事へ目を通す。

これまで圧倒的だった既存政党は少しずつ支持を落としている。


その一方で――。


『シュタール労働者党 支持率上昇』


まだ大政党には遠く及ばない。

それでも結党したばかりの政党としては、予想を上回る数字だった。


私は思わず小さく笑う。


「少しずつ……ね」


ラインも新聞を覗き込む。


「街頭演説や討論会の効果でしょうか」


ヴィルも頷く。


「政策が浸透し始めています」


一方、その記事を読んだ既存政党では。


「何だ、この数字は!」


「結党したばかりの党だぞ!」


「放っておけば消えると思っていたのに……」


会議室では怒号が飛び交っていた。


「新聞が持ち上げすぎだ!」


「いや、支持が本当に動いている」


「早く対策を考えろ!」


今まで笑っていた相手が、ようやく無視できない存在になり始めていた。


事務所へ戻ると、ヘルムが新聞を読み終え、大きく頷いた。


「ほぅ〜こりゃ、いい流れだ」


私は笑顔で答える。


「まだ始まったばかりよ」


ヘルムは共和国全土の地図を広げた。

赤い印が付いた選挙区を一つずつ指でなぞる。


「ここは支持率が高い。ここも予想以上だ。逆に、この辺りはまだ弱い」


彼はしばらく黙って考え込んだ。

そしてニヤリと笑う。


「もう少し出馬させるか」


ラインが驚く。


「候補者を増やすんですか?」


「ああ」


ヘルムは即答した。


「この流れなら勝負できる。手応えがある地区へ追加で候補を立てる。それが一番いい」


私は地図を見つめながら考える。


「確かに……支持がある所で議席を取りこぼす方がもったいないわね」


ヴィルも頷いた。


「選挙は勢いも重要です」


ヘルムは候補者名簿を取り出す。


「まだ推薦できる人材はいる」


「教師、港の労働組合代表、医師、鉄道技師、使える人間は、まだまだいるぞ」


私は笑みを浮かべた。


「なら、お願いしましょう」


「でも」


ヘルムが首を傾げる。


「何だ?」


私は真剣な表情になる。


「勝てそうだから出すんじゃない。この人なら地域を任せられる。そう思える人だけにしてください」


ヘルムは一瞬だけ黙り、やがて満足そうに笑った。


「分かってる!俺も数合わせは嫌いだ」


私は新聞をもう一度見つめる。

支持率は数字でしかない。

今日上がっても、明日には下がるかもしれない。

だから浮かれてはいけない。


「一つ一つ積み重ねるだけね」


その言葉に、ラインもヴィルも静かに頷いた。


シュタール労働者党。


結党からわずかな期間で、共和国の政治地図へ小さな変化を生み始めていた。


そしてその小さな波紋は、やがて既存政党を本気で揺さぶる大きな波へと変わろうとしていた。

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