仲間が増える
公開討論会の翌朝。
事務所へ向かう途中、新聞売りの声が首都中へ響いていた。
「号外!」
「公開討論会!」
「若き党首、現職議員を圧倒!」
私は苦笑しながら新聞を一部買う。
一面ではない。
だが政治欄の見出しは大きかった。
『実績を語る若き少女』
『現職議員、具体策示せず』
さらに記事には、昨日の討論会でのやり取りがそのまま掲載されていた。
「私達は一年で橋を三本修理しました」
「あなた方は、この一年で何をされましたか?」
そして記事の最後には、記者ウス・ライの一文が添えられていた。
『高い給料を受け取る現職議員達は、この問いに最後まで答えられなかった』
私は思わず苦笑する。
「随分と思い切った記事を書くのね」
そこへ、ヘルムが新聞を片手に入ってきた。
「昨日の討論会、やったな!流石だ!」
新聞を広げながら笑う。
「ほら見ろ!首都中、この話で持ちきりだ」
ラインも記事を読みながら頷く。
「かなり反響がありますね」
ヴィルも笑みを浮かべる。
「これで名前だけではなく、政策も知られるようになります」
その日の午前中。
事務所の扉が何度も叩かれた。
「失礼します」
最初に訪れたのは帰還兵だった。
「昨日の討論会を見ました」
「私も、この党で働きたい」
続いて若い官僚。
「現場を知る政治が必要です。ぜひ参加させてください」
昼になる頃には教師が訪ねてきた。
「教育を変えたいんです」
午後には鍛冶職人。
「技術を大切にする党だと聞きました」
夕方には商人までやって来る。
「経済を立て直したい!私達にも手伝わせてください」
一日中、人の出入りが途切れなかった。
私は受付名簿を見つめる。
「こんなに……」
昨日まで四人しかいなかった党が、少しずつ大きくなっている。
ラインは新しい机を運び込みながら笑う。
「事務所が手狭になりそうですね」
ヴィルも書類を整理しながら頷く。
「嬉しい悲鳴です」
ヘルムは壁にもたれ掛かり、腕を組んだ。
「人は希望がある所へ集まる。昨日の討論会で、それを見せられた」
私は集まった人達を見回した。
帰還兵。官僚。教師。職人。商人。
年齢も立場も違う。
それでも皆の表情には共通したものがあった。
「この党なら……」
一人の帰還兵が静かに口を開く。
「この党なら、国を変えられるかもしれない」
その言葉に誰も笑わなかった。
むしろ、多くの人が静かに頷いていた。
私はその光景を見つめながら思う。
領地で始めた小さな復興。
それが今、首都で新たな仲間を集め始めている。国を変えるには、まだ力は足りない。
それでも、一人ではなかった。
少しずつ本当に少しずつだが、同じ未来を目指す仲間が増え始めていた。




