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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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最初の政策

新聞へ記事が載ってから数日。

小さな事務所には、毎日のように人が訪れるようになっていた。


若い官僚。教師。商人。元兵士。学生。


「入党したいのですが」


そんな声も少しずつ増えていく。

私は受付で一人一人と話をしていた。

その時、一人の青年が手を挙げる。


「質問があります」


「はい」


青年は真っ直ぐ私を見つめた。


「この党は、何をする党なんですか?」


部屋が静まり返る。

皆が同じことを思っていたのだろう。


「結党しました。若い党です。でも、何を目指すのかが分かりません」


私は静かに頷いた。


「その通りね。では、明日。皆さんへお話しします」


その夜。

私は机へ向かった。

真っ白な紙を前にして考える。


理想を書くべきか。

夢を書くべきか。


私は首を横へ振った。


「違う」


私達に必要なのは、理想ではない。

実績だ。

私は一つずつ書き始めた。


一つ。ハイパーインフレ対策。

二つ。雇用創出。

三つ。食料備蓄。

四つ。技術教育。

五つ。地方復興。


私はペンを置いた。


「これで十分」


翌日。

事務所へ三十人ほどが集まっていた。

私は黒板の前へ立つ。


「これが、私達の最初の政策です」


黒板へ、五つの項目を書く。


ハイパーインフレ対策。

雇用創出。

食料備蓄。

技術教育。

地方復興。


部屋は静かだった。

私は続ける。


「私達は、理想だけを語るつもりはありません。これらは全て、シュタインベルク領で実際に行った政策です。橋を直しました。帰還兵へ仕事を作りました。学校で技術教育を始めました。備蓄も行いました。そして領地は立ち直り始めています」


私は一人一人の顔を見る。


「つまり。成功した方法を共和国全土へ広げる。それが、この党の政策です」


部屋の後ろで聞いていた若い官僚達が顔を見合わせる。

一人が静かに手を挙げた。


「実は……中央官庁では、シュタインベルク領は有名なんです」


私は少し驚く。


「そうなんですか?」


官僚は笑って頷いた。


「はい。地方から送られてくる統計資料は、全て中央へ集まります。税収。食料生産。雇用。物価。全部です」


別の官僚も続けた。


「だから視察団も派遣されたんです。数字だけ見ても異常でした。戦後なのに税収が回復している。失業率が下がっている。食料不足も少ない。何が起きているのか、皆知りたかったんです」


私は思わず苦笑した。


「なるほど……数字は正直ね」


ヘルムは腕を組んで笑う。


「だから言っただろ。政治家より官僚を見ろ。官僚は数字を見ている。演説じゃ騙せねぇ」


私は静かに頷いた。

その通りだった。


議会では立派な演説が飛び交う。

しかし官僚達は違う。彼らは結果を見る。


成果を見る。数字を見る。


だからこそ、シュタインベルク領へ何度も視察団が送られてきたのだ。

私は改めて党員達へ向き直る。


「私達は約束だけを並べる党にはなりません。実際に成功した政策を広げます。失敗した政策は改めます。必要なのは理想ではなく、結果です」


部屋は静まり返っていた。

やがて、一人が拍手を始める。

続いて二人。三人。

気が付けば部屋中が拍手に包まれていた。


小さな政党だった。


しかし、その党には他の政党にはない武器があった。


「すでに成功した実績がある」


それこそが、シュタール労働者党最大の強みになろうとしていた。

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