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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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新しい領民

難民村ができて一週間。

炊き出しも落ち着き、人々の表情にも少しずつ余裕が戻り始めていた。


だが、私は一つ気になっていることがあった。


「このままでは駄目ね」


食事を配るだけでは、人は自立できない。

生活を立て直すには、やはり仕事が必要だ。

私は父へ相談した。


「皆さんのお話を聞きたいんです」


父は静かに頷く。


「経歴を調べるのか」


「はい。何ができるのか知らなければ、仕事もお願いできません」


父は笑みを浮かべた。


「お前らしい考えだ」


翌日。

領館の一室へ机が並べられた。

一人ずつ難民が入ってくる。

私はノートを開き、質問を始めた。


「以前はどんなお仕事をされていましたか」


最初に入ってきた男性が答える。


「大工です」


「家を建てておりました」


私は頷き、名前の横へ書き込む。

大工経験あり


次の男性。


「鍛冶屋で働いていました」


その次。


「馬車の修理をしておりました」


女性の一人は少し遠慮がちに話す。


「学校の教師でした」


私は思わず顔を上げる。


「先生だったんですか」


「はい」


「子供達へ読み書きを教えておりました」


私は笑顔になる。


「ぜひ、お力を貸してください」


教師は涙ぐみながら頭を下げた。


「ありがとうございます」


昼過ぎまで聞き取りは続いた。


農民。石工。仕立て職人。荷馬車の御者。

薬草を扱っていた女性までいた。


私はノートを見ながら感心する。


「こんなに色々な仕事をしていた人がいたのね」


執事も驚いていた。


「人手不足だった理由が分かります」


私は苦笑する。


「仕事が無かったんじゃない。仕事と人が結び付いていなかっただけなのね」


その日の夕方。

父へ報告書を渡す。


「見事だな」


父はページをめくりながら頷いた。

職業ごとに整理され。人数まで書かれている。

私は説明を続ける。


「大工さんは工房の建設へ」


「鍛冶経験者は鍛冶屋へ」


「教師の方は学校へ」


「農家の方は来年の畑作りへ」


「馬車職人は修理工房へ」


父は静かに笑う。


「適材適所か」


私は頷いた。


「前世でも、得意な仕事をしてもらうのが一番成果が出ましたから。無理に違う仕事を覚えるより、その人の経験を活かした方が早いんです」


父は満足そうに報告書を閉じた。


「領主も人を見る目が必要ということだな」


「はい」


私は笑顔で答えた。


「人も大切な財産ですから」


数日後。


工房では新しく来た鍛冶職人が弟子達へ技術を教えていた。

学校では元教師が子供達へ文字を教えている。

大工達は難民村の家をさらに増築していた。

私はその様子を見ながら、小さく微笑んだ。


一週間前。

彼らは領館の前で頭を下げていた。


「この領地で働かせてください」


そう願っていた人達だった。

だが今は違う。


「この金槌は、こう持つんだ」


「文字はゆっくり書けばいい」


「あわてなくても大丈夫」


今度は教える側になっていた。

私はその光景を眺めながら静かに呟く。


「仕事をくださいと言っていた人達が……今は仕事を教える側になっている」


その言葉に、父も穏やかに頷いた。


「人は守るだけでは足りない。力を発揮できる場所があってこそ、本当の意味で立ち直れる」


私は大きく頷く。


難民。帰還兵。領民。


今ではその境界は少しずつ薄れてきていた。

皆がそれぞれの役割を持ち、この領地を支えている。

それこそが、私の目指していた復興の形だった。

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