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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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初めての工業学校

秋の風が吹き始めた頃。

私は学校を訪れていた。

以前より子供達の姿が増えている。


給食を始めた効果もあってか、午前中だけでも通う子供が少しずつ増えていた。


教室からは元気な声が聞こえてくる。

私はその様子を見て自然と笑みが浮かんだ。


「少しずつ増えてきたわね」


教師も嬉しそうに頷く。


「はい、お嬢様」


「子供達も楽しそうに勉強しております」


私は教室を見渡しながら考える。

読み書き。計算。もちろん大切だ。

だが、この領地にはもう一つ必要なものがある。


技術だった。


数日後。

学校へ、一人の来客が訪れた。

鍛冶屋の親方だった。

子供達は見慣れない大男に少し緊張している。

親方は頭をかきながら笑った。


「そんなに怖がるな。今日は剣を打ちに来たんじゃねぇ」


教室に笑いが広がる。私は親方へ声を掛けた。


「今日はよろしくお願いします」


「任せてくだせぇ」


私は教師と親方へ話を始めた。


「読み書きだけではなく、技術も教えませんか」


教師は少し驚いた表情を浮かべる。


「技術……ですか」


私は頷いた。


「鍛冶屋さんには鍛冶の基本」


「大工さんには木工の基本」


「農家さんには農具の手入れ」


「職人さん達に先生になっていただきたいんです」


親方は腕を組みながら感心したように頷く。


「面白ぇ話だ」


私は続ける。


「弟子として工房へ入ってから教えるのも大切です。でも、何も知らない子へ、一から教えるのは大変ですよね」


親方は大きく頷いた。


「その通りだ。火の扱い方から教えなきゃならねぇ。金槌の持ち方も分からねぇ子ばかりだからな」


私は微笑む。


「だから学校で基本だけでも覚えてもらいます」


「道具の名前、安全な使い方、簡単な作業。そこまで覚えてから弟子入りすれば、職人さんも教えやすくなります」


親方は嬉しそうに笑った。


「なるほどな。それなら仕事も覚えるのが早ぇ」


その日から授業が始まった。

教室の机には小さな木片。


釘。金槌。のこぎり。


子供達は目を輝かせている。


「今日は木を真っすぐ切る練習だ!」


親方の大きな声が教室へ響く。

最初はぎこちない。

真っすぐ切れない子も多い。

それでも親方は笑いながら教えていく。


「失敗して覚えるんだ!」


教室には笑顔が溢れていた。


授業が終わる頃。

私は窓からその様子を眺めていた。

親方が私の隣へやって来る。


「中々良いもんですな」


私は頷く。


「ええ。将来の職人さん達が増えます」


親方も子供達を見つめながら笑った。


「弟子だけで育てるより、ずっと効率が良さそうだ」


私は静かに続ける。


「弟子制度は無くしません。でも、工房は仕事をする場所です。作業を止めて教えるのは大変でしょう」


親方は苦笑した。


「その通りだ。仕事をしながら教えるのは思った以上に時間が掛かる」


私は子供達を見ながら微笑んだ。


「だから学校で基本を覚えてから送り出します。そうすれば職人さんは、もっと高度な技術を教えられます」


親方は大きく頷く。


「こりゃ十年後が楽しみだ」


帰り道。


私はノートへ新しい項目を書き加えた。


『技術は教える場所と、磨く場所を分ける』


学校では基礎を学ぶ。

工房では実践を学ぶ。

その二つが繋がれば、この領地には今まで以上に多くの職人が育つはずだ。


私は夕焼けに染まる学校を振り返る。


橋を造る人。農具を作る人。馬車を修理する人。そして、いつか新しい技術を生み出す人。


その第一歩は、小さな教室の中から静かに始まっていた。

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