海からの一撃
シア軍・北方戦線。
「前線が突破された!?」
「は、はい! 前線部隊からの連絡が途絶えております!」
司令官は地図を睨みつける。
「フィン軍が後方へ回り込んだのか?」
「可能性があります!」
「前線部隊を後方警戒へ回せ!」
「しかし、そうすれば前線が薄くなります!」
「構わん!」
「後方の補給拠点を守れ!」
「はっ!」
シア軍の部隊が次々と後方へ移動を始める。
その頃、フィン側前線。
「どうやら、上手くいっているようだな」
「共和国戦艦が、上手く侵入できたようですな」
「まさかシアの奴ら、自分たちが艦砲射撃を受けているとは思ってもいないだろう」
「ですな」
二人は霧に包まれた前線を見る。
その向こうには、シア軍の後方陣地がある。
「さて……こちらも前進を進めるか」
「例の新型ですか?」
「ああ」
フィン指揮官は地図上の進撃方向を見る。
「新型の三号突撃戦車だ。シアの奴らに、その威力を味わってもらおうか」
その頃、フィン軍も動き始めていた。
「前進!」
「敵後方が混乱している!」
フィン軍の部隊が一斉に前進する。
シア軍は後方の警戒に兵力を回していたため、前線の防御が薄くなっていた。
そこへフィン軍が攻撃を仕掛ける。
「砲撃開始!」
ドォン!ドォン!
戦車と砲兵が前進し、シア軍の防衛線へ圧力を掛けていく。
「敵が来たぞ!」
「迎撃しろ!」
しかし、後方では依然として共和国戦艦の砲撃が続いていた。
ドン!ドン!ドン!
シア軍の補給拠点が再び炎に包まれる。
「艦長!」
「そろそろ時間か?」
「はい!」
「フィン軍が予定地点まで前進しております!」
艦長は時計を確認する。
「ならば、一八〇度回頭!」
「はっ!」
「その間も砲撃は続けるぞ!」
「了解!」
艦がゆっくりと旋回を始める。
「砲術班!目標を維持!」
「次弾装填!装填完了!」
「撃て!」
ドン!ドン!ドン!
二隻の共和国戦艦が、霧の中からシア軍後方へ砲弾を送り続ける。
そしてシア軍では、ようやく異変に気付く者が現れ始めていた。
「おかしい……」
砲兵指揮官が、爆発する後方陣地を見つめる。
「何がです?」
「フィン軍の野砲ではない」
「ですが、砲撃地点はまだ特定できていません」
「ならば、砲弾を調べろ!」
しばらくして、別の士官が報告する。
「炸薬量が……違い過ぎます」
「何?」
「これまで受けていたフィン軍の砲撃とは威力が違います」
「まるで……」
士官が言葉を詰まらせる。
「まるで艦砲射撃のようです」
司令官の顔が強張る。
「……海から撃っているのでは?」
「しかし……この濃霧だぞ?」
「敵艦が、こんな海域まで侵入できるはずがない!」
誰も答えられない。
そして、再び――ドン!ドン!ドン!
巨大な砲声が霧の向こうから響き渡った。
司令官は唖然とする。
「まさか……共和国が……陸軍だけではなく、空軍だけでもない。海軍まで、この戦場に入ってきたというのか……?」
その頃、霧の中では共和国戦艦が静かに旋回を終えていた。
「艦長、回頭完了!」
「よし」
艦長は砲撃目標を確認する。
「まだまだ撃てるな」
「はい!」
「なら、フィン軍が前進するまで援護するぞ」
「はっ!」
霧のフィン湾。
共和国海軍の砲撃は、まだ終わっていなかった。
回頭完了!
「射程限界まで砲撃を続けろ!」
「はっ!」
ドン! ドン! ドン!
「副艦長!」
「はい!」
「天候は?」
「変化ありません!」
「ならば、このまま前進する」
「進路は?」
「リン港を掠める航路を取る」
副艦長が少し驚いた表情を浮かべる。
「リン港を砲撃ですか?」
「そうだ」
「その代わり、天候がこのままというのが条件だ!濃霧が続いている間に接近する」
「はっ!」
数時間後。
リン港近海。
濃い霧の中を、共和国戦艦がゆっくりと進んでいた。
「艦長!」
「何だ?」
「電探に感あり!」
「距離は?」
「複数の反応を確認!」
「大きさから判断して、輸送船と思われます!」
艦長が海図を確認する。
「……リン港へ向かう輸送船か」
「間違いないと思われます」
艦長は少し考えたあと、静かに命令を下す。
「砲撃を開始せよ!」
「はっ!」
砲塔がゆっくりと旋回する。
「目標、輸送船!」
「各砲塔、準備!」
「撃て!」
ドン!ドン!ドン!
濃霧に包まれたリン港近海へ、共和国戦艦の砲声が響き渡った。




