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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


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戦線拡大

共和国総統執務室。


ベレは机に並べられた報告書へ、順番に目を通していた。


「航空作戦は順調……」


航空隊からの報告書を確認する。


「損害も軽微か」


続いて陸軍からの報告書へ目を移す。


「陸軍も、東部、北部、南部の三方向から侵攻中」


各戦線とも、予定通り進撃しているようだった。

ベレは椅子へ深く腰掛ける。


「ふぅ……今のところ、順調そうね」


しかし、すぐに表情が曇る。


「問題は……」


地図へ視線を向ける。


「シア軍と接触したら、どうなるか……ね」


これまで共和国軍が戦ってきたのは、主にポランド軍だった。

シア軍とは、空襲による小規模な交戦を除けば、本格的な地上戦はまだ経験していない。


「シア軍の規模も、実際の戦力もまだ分からない。ここからが本当の戦争になるかもしれないわね」


そこへラインが別の報告書を持ってくる。


「総統」


「何?」


「軍需物資の生産についても、現在のところ順調です」


「航空機、戦車、砲弾、銃器、燃料関連物資など、二十四時間体制へ移行してから各工場で生産記録を更新しております」


ベレは少し驚いた表情を浮かべる。


「生産記録を更新し続けている?」


「はい」


「原料の確保にも、今のところ大きな問題はありません」


ベレは報告書をめくる。


「鉄鋼も?」


「問題ありません」


「ゴムや燃料は?」


「現時点では、備蓄と輸入の両方で対応できています」


「そう……」


ベレは少しだけ安心したように息を吐く。


「それなら、今のところは問題なさそうね」


しかし、ラインが続ける。


「ただし、戦線がさらに拡大すれば話は変わります。特に燃料と輸送車両、それに航空機用部品の消費量が急増する可能性があります」


「やっぱり……」


ベレは地図を見る。


ポランド。フィン。


そして、そのさらに先に広がるシア。


「戦争って、本当に物凄い勢いで物を消費するのね……」


「だからこそ、兵站を止めないことが重要です」


「そうね」


ベレは頷く。


「前線だけ見ていたら駄目。工場も、鉄道も、道路も、補給部隊も全部が戦場の一部ね」


そして、再びシアとの国境方面へ視線を向ける。


「問題は……シア軍と、いつ接触するか。そして、その時に共和国軍がどこまで通用するか」


ベレの表情から、わずかな緊張が消えなかった。


共和国軍の進撃は順調だった。

しかし、その先にはまだ、未知の敵が待ち構えていた。


ベレは次の報告書へ目を移した。


「次は……フィン前線か」


フィン方面の戦況報告を確認する。


「うちの空軍から一個飛行団を送ったし……それに、旧式戦艦二隻も向かわせたわね」


ラインが頷く。


「はい」


「多少の防空能力を追加する改修を行ったようですが、問題なくフィンへ到着したとの報告が入っております」


「そう」


ベレは少し安心したように息を吐く。


「古い艦でも、使い道はあるものね」


「はい。輸送船団の護衛や沿岸防衛など、役割は十分にあるかと」


「それなら良かった」


ベレはフィン方面の地図へ目を向ける。


「航空隊も到着しているし、これで少しはあちらの戦線も強化できればいいけど」


ポランド方面では、共和国軍が大規模な進撃を開始している。


その一方で、北方のフィン戦線でも共和国の支援戦力が増えていた。


ベレは二つの戦線を見比べる。


「……二つの戦線か」


「共和国も、随分と大きな戦争に巻き込まれたものね」


ラインは答えず、静かに資料を整理していた。


ベレは再びフィン方面の報告書へ目を落とす。


「せめて、フィンにはもう少し楽をさせてあげたいわね」


しかし、その願いとは裏腹に、フィン方面でも戦況は少しずつ動き始めていた。

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