進撃開始
共和国・東部国境付近の軍用飛行場。
まだ夜が明けきらない時間。
広大な飛行場には、戦闘機、急降下爆撃機、爆撃機が所狭しと並んでいた。
その数は数百機。
整備兵たちは慌ただしく機体を確認し、燃料を満たし、弾薬を搭載していく。
「燃料、確認!」
「弾薬搭載完了!」
「機体、異常なし!」
次々と報告が飛び交う。
その一方で、足の長い偵察機はすでに数十機が飛び立っていた。
「偵察機から報告!」
通信員が受け取った情報を参謀へ渡す。
「敵部隊、こちらへ移動中」
「別の部隊は西へ移動」
「敵飛行場を確認!」
次々と情報が集まってくる。
参謀たちは地図へ情報を書き込みながら、攻撃目標を決定していく。
「この飛行場を第一目標」
「こちらの補給拠点も攻撃対象に」
「橋梁は?」
「敵部隊の移動経路です。優先度を上げましょう」
偵察によって得られた情報をもとに、攻撃目標が次々と決められていく。
そして――
「全機、発進準備!」
格納庫の奥から、次々とエンジン音が響き始める。
ブロロロロ……
ブロロロロ……
飛行場全体が震えるような轟音に包まれた。
「第一編隊、発進!」
戦闘機が滑走路を駆け抜け、次々と空へ舞い上がる。続いて急降下爆撃機。そして爆撃機。
数百機の航空機が、次々と共和国の空へ飛び立っていく。
向かう先は、ポランド各地。
東部軍所属の航空隊だけではない。
北部軍所属の航空隊も、南部軍所属の航空隊も、ほぼ同時に行動を開始していた。
三方向から一斉に航空攻撃が始まる。
「西部航空隊、進撃開始!」
「北部航空隊も発進!」
「南部航空隊、こちらも予定通り!」
共和国空軍は、これまで積み重ねてきた訓練と実戦経験を総動員していた。
そして――航空機が空へ上がった後、地上部隊も動き始める。
「前進!」
エンジン音が鳴り響く。
戦車。装甲車。トラック。砲兵。歩兵。
共和国陸軍の大部隊が国境を越えて進み始めた。
東部軍。北部軍。南部軍。
三つの軍が、それぞれの進撃路を進んでいく。
しかし、司令部では緊張が続いていた。
「本当に三方向同時作戦を維持できるのか?」
「兵力は足りている」
「問題は補給だ」
「三方面へ同時に物資を送ることになる」
参謀たちは地図を見つめる。
今回の作戦は、共和国軍にとっても初めて経験する大規模な三方面同時作戦だった。
そして、地上部隊の後方では補給部隊も動き始めていた。
トラックが連なり、燃料、弾薬、食料、医薬品を積み込んで進んでいく。
「第一補給隊、出発!」
「次の隊も続け!」
「前線の進撃速度に合わせろ!」
共和国がこれまで整備してきた道路と鉄道。
そして、最近強化された補給部隊。
そのすべてが、今度は戦場へ向けて動き出していた。
共和国軍は、ついにポランド戦線へ大規模な進撃を開始した。
空。陸。そして、その後方を支える補給。
三方向から進む共和国軍が、ポランドの戦場を大きく動かそうとしていた。
その頃、フィン国内でも大きな動きが起きていた。
フィン軍の司令部には、共和国から新たな連絡が届いていた。
「共和国空軍の航空団が到着しました!」
「航空団?」
「はい!」
「戦闘機、急降下爆撃機を中心とした部隊です。爆撃機もこちらへ向かっている様です」
フィン軍の士官たちが顔を見合わせる。
「しかし、あの機体は航続距離が……」
「その問題も対策済みのようです。足の短い戦闘機や急降下爆撃機には、急遽増槽を取り付ける改造が行われたとのことです」
「なるほど……」
フィン軍の士官が、到着した共和国機を見上げる。
「これなら、以前よりも長い時間この空域で活動できる」
「共和国も本気だな……」
さらに、別の報告が届く。
「共和国海軍からも連絡が入っております!」
「何だ?」
「共和国海軍が、輸送船団の護衛を開始しております。それだけではありません。改修を受けた旧型戦艦二隻と、水雷艇十二隻もこちらへ向かっているとのことです」
フィン軍司令部にざわめきが広がる。
「戦艦まで……共和国は、そこまでしてくれるのか」
これまで共和国から送られてきた兵器や物資。
そして今回の航空隊。
さらに海軍まで動き始めた。
フィン国内でも、共和国への期待が一気に高まっていた。
「これなら……」
一人の士官が呟く。
「シアに、もう好き勝手にはさせない」
フィン軍の士気は、確実に上がり始めていた。
そして共和国は、ポランド戦線だけではなく、フィン戦線にも戦力を送り込むことで、シアに対して圧力を強めようとしていた。




