揺れるポランド政府
ポランド首都。
大統領府。
緊急閣議が開かれていた。
壁一面に広げられた地図には、刻一刻と変化する前線が記されている。
国防大臣が険しい表情で口を開いた。
「大統領閣下。このままでは戦線の維持は困難です。シア軍は圧倒的な兵力で押し寄せております」
参謀総長も続ける。
「共和国へ支援を要請すべきです。弾薬、燃料、医薬品……どれも不足しております」
しかし、外務大臣は首を横に振った。
「いや!共和国も信用できません。飛行場を貸せば、そのまま軍を送り込んでくる可能性もあります」
会議室がざわつく。
国防大臣が机を叩いた。
「では、このまま戦線を崩壊させるつもりですか!共和国は既に避難民の受け入れを表明しています。人道支援の申し出もあったではありませんか!」
外務大臣は険しい表情を崩さない。
「それでも国境付近には共和国軍が展開しております。警戒するのは当然です」
別の閣僚が静かに口を開いた。
「ならば……飛行場だけでも貸してはどうでしょう?物資だけなら受け入れられます」
しかし、別の閣僚が反論する。
「共和国軍機が飛来すれば、そのまま居座る可能性もあります」
議論は平行線をたどった。
誰も決断できない。
その頃。
ポランド東部戦線。
砲撃が絶え間なく続いていた。
「敵歩兵接近!」
「何という数だ!」
「押し返せ!」
しかし、次々と敵兵が前進してくる。
「弾薬が尽きます!補給隊はまだか!」
指揮官が叫ぶ。
「航空支援は!」
通信兵が首を横に振る。
「ありません!敵機が上空を飛び回っています!」
指揮官は拳を握り締めた。
「司令部へ救援要請を!」
「弾薬と兵力を!何でもいい!伝令を走らせろ!」
「はっ!」
戦線は、少しずつ押し込まれ始めていた。
一方、その頃。
共和国情報省。
ヘルムは各地から届く報告書を机いっぱいに並べていた。
「ポランド軍は善戦している……だが、シア軍の物量に押され始めているな」
情報将校が頷く。
「はい。現地では弾薬や燃料不足も確認されております」
ヘルムは地図を見つめる。
「ポランド政府は?」
「依然として混乱しております。共和国から要請している飛行場使用許可についても、まだ回答はありません」
ヘルムは腕を組み、小さく息を吐いた。
「恐らく、あと数日だな。戦況がさらに悪化すれば、決断せざるを得なくなる」
その報告は総統府にも届けられた。
ベレは静かに資料を閉じる。
「焦って押しかける方が危険ね」
ラインが頷く。
「ポランド側が侵略と受け取る可能性もあります」
「ええ。今は待ちましょう。支援の準備だけは整えて。正式な要請が届けば、すぐに動けるようにしておいて」
「承知しました」
共和国は軍も物資も準備を終えていた。
しかし、その一歩を踏み出すためには、ポランド政府自身の決断が必要だった。
戦場だけではなく、首都でもまた、一刻を争う戦いが続いていた。




