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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


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兵器輸出の波

共和国総統執務室。


ベレは朝から次々と回ってくる書類へ目を通していた。


「うーん……」


思わず腕を組む。


「最近、本当に書類が増えたわね」


ラインが苦笑する。


「良い知らせが多い証拠でもあります」


「そう願いたいわね」


ベレは次の書類を開いた。


「これは?」


「外務省からです。フィン国での共和国製兵器の活躍を受け、各国から問い合わせが相次いでおります」


ベレは資料へ目を通す。


「ルマニア……イスス……ガリー……希望する兵器は?」


ラインが答える。


「一〇九戦闘機。三八t戦車。いずれも購入を希望しております」


ベレは地図を広げた。


「イススとガリーは……」


指で国境をなぞる。


「共和国と国境を接している国ね」


「はい」


「両国とも外交関係は良好です。これまでの貿易も大きな問題はありません」


ベレは少し考え込む。


「フィンで実戦の評価が出たから、興味を持ったのね」


「そのようです」


「特に一〇九戦闘機への関心が高いとの報告です」


ベレは小さく頷いた。


「なら、売りましょう」


ラインが確認する。


「輸出を許可されますか?」


「ええ。ただし、我が軍への配備を優先すること。そのうえで余力のある分を輸出しましょう。細かな数量や納期は国防省と外務省で調整して。私は専門家の判断を尊重するわ」


ラインは微笑んだ。


「承知しました。各省へ伝達いたします」


ベレは窓の外を眺め、小さく呟く。


「少し前までは、共和国がで兵器を作る事も困難だったのに……」


ラインも静かに頷く。


「今では作って売る側になりました」


「時代も変わるものね」


共和国は自国の軍備を整えるだけではなく、各国へ兵器を輸出する工業国家へと成長しつつあった。

兵器輸出は経済を支え、工場を動かし、多くの雇用を生み出す。


そして同時に、共和国と各国を結ぶ新たな外交の架け橋にもなっていく。


世界は今、共和国製兵器へ大きな関心を寄せ始めていた。


ベレは一息つくと、机の上に積まれた書類をめくった。


「そういえば……最近は陸軍の報告ばかり見ていたわね」


小さく苦笑する。


「でも今回の戦争でよく分かったわ。空は、とても重要ね」


フィンでは制空権の確保が戦線を支えた。

ペインでは航空支援が戦局を大きく動かした。

航空機は、もはや陸軍を支える補助ではない。

戦場そのものを左右する存在になりつつあった。


「前に空軍へ指示しておいた新型機の進捗は……」


ベレは一冊の資料を手に取る。


「これね」


最初のページには、新型双発爆撃機の開発状況が記されていた。


「百十一……八八爆撃機……」


性能表を見比べながら、小さく頷く。


「うーん。どちらも一長一短って感じかしら」


百十一は航続距離と搭載量に優れ、八八は速度と運動性能が高い。

用途が異なるため、簡単に優劣はつけられない。


「この二機種は予定どおり開発と生産を続けましょう」


ベレは資料へ書き込みを加える。

続いて次の資料を開く。


「二〇〇旅客機……?ああ、四発機を開発してってお願いしていた機体ね」


図面を眺めながら考える。


「これなら輸送機にも転用できそう。長距離偵察機としても使えるし……」


さらに図面を見つめる。


「機体に余裕があるなら、大型爆撃機への改造も視野に入れられるかしら」


ベレはペンを走らせた。


『輸送機型。長距離偵察機型。大型爆撃機型。それぞれ試案を作成されたし』


書き終えると、小さく微笑む。


「一つの機体をいろいろな用途に使えた方が効率もいいものね」


そして、もう一枚の書類を取り出した。


「それと……飛行機だけ作っても意味がないわ」


ラインが頷く。


「操縦士ですね」


「ええ」


「整備士も通信員や地上要員も必要になるわ」


ベレは指示書へ追記する。


『空軍要員の育成計画を見直すこと。操縦士、整備士、航空通信員を中心に養成規模を二倍へ拡大。航空学校の設備増設についても検討されたし』


ラインは指示書を受け取った。


「承知しました。空軍省と教育省へも伝達いたします」


ベレは窓の外の青空を見上げる。


「飛行機は、人がいて初めて飛ぶもの。機体だけじゃ駄目。操縦する人も、整備する人も、支える人も育てなければ、本当に強い空軍にはならないわ」


共和国は兵器だけではなく、それを支える人材の育成にも力を注ぎ始めようとしていた。

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