↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
381/401

主力戦車の選択

総統執務室。


ラインが一通の電報を手に入室した。


「総統。フィン国より、追加注文が届いております」


ベレは書類を受け取り、目を通す。


「内容は?」


「一号戦車、三八t戦車、それに一〇九戦闘機の追加購入希望です」


「八七急降下爆撃機につきましても、今後の追加導入を検討したいとのことです」


ベレは静かに頷いた。


「そう……」


「実戦で評価してもらえたのね」


ラインも微笑む。


「現地の武官からも、高い評価が届いております」


「なら受注しましょう。国防省と工廠へ伝えて」


「はい」



共和国中央戦車工廠。

工場長が大きな声を上げた。


「フィン国から追加注文だ!」


工員たちの手が止まる。


「一号戦車!」


「三八t戦車!」


「一〇九戦闘機も増産決定!」


工場内が一気に活気づく。

工場長は腕を振り上げた。


「生産が追いつかん!今日から三交代制へ切り替える!設備も増設だ!」


「「はい!」」


工場内には再び機械の音が響き始めた。


その報告を受けたベレは、兵器開発局の資料を広げる。


「三号戦車の開発も終わったのね」


兵器開発局長が頷く。


「はい。試験も良好です。ただ、生産工程が複雑で、一両あたりの製造期間は長くなります」


ベレは図面を見比べる。


「一方、四号戦車は……生産性を重視した設計です。革新的な技術は三号戦車ほど多くありません。その代わり、既存技術を活用しているため量産しやすくなっております」


ベレはカタログをめくる。


「なるほど。三号戦車は、新しい技術をたくさん取り入れている。だから時間が掛かるのね」


「はい。一方、四号戦車は拡張性も高く、将来的には七五ミリ砲の搭載も可能です。三号戦車は五十ミリ砲までが現実的かと」


ベレはしばらく考え込んだ。

共和国はいま急速に軍備を拡充している。


国内だけではない。


フィンをはじめ、輸出も増えている。


「今は……数も必要な時期ね」


兵器開発局長は静かに頷く。


「その通りです」


ベレは顔を上げた。


「三号戦車は予定どおり少量生産しましょう。部隊で運用しながら改良を続けるわ。そして量産の主力は四号戦車へ移行。生産ラインも順次切り替えましょう」


局長は力強く敬礼した。


「承知しました」


ベレは図面を見つめ、小さく微笑む。


「性能だけでは駄目。たくさん作れて、たくさん整備できることも兵器の大切な性能よ」


共和国は実戦だけでなく、生産というもう一つの戦場でも、着実に力を蓄え始めていた。


――その日の午後。


秘書官が来客を告げる。


「総統閣下。三号戦車の開発主任がお見えです」


「通して」


しばらくすると、一人の技術者が図面を抱えて入室した。


「お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます」


ベレは笑顔で迎える。


「どうしたの?」


技術者は少し申し訳なさそうに口を開いた。


「三号戦車の生産性が良くないとのお話を、小耳に挟みまして……」


ベレは小さく頷く。


「そうね。でも、新しい技術へ挑戦したことを悪いとは思っていないわ。今はこう言う時代だから、ある程度の数を揃える必要があるの。そのための判断よ」


技術者も深く頷いた。


「はい。その点は十分理解しております。そこで、一つ提案があります」


「提案?」


技術者は図面を机へ広げた。


「三号戦車の車体を流用した、突撃砲です」


ベレは図面を覗き込む。


「突撃砲?」


「はい」


「回転砲塔を廃止し、固定式の戦闘室へ変更した車両になります」


技術者は図面を指差しながら説明を続ける。


「砲塔を製造する工程が不要になりますので、生産性は大幅に向上します。部品点数も減り、製造コストも抑えられます。さらに、車体上部に余裕ができますので、七五ミリ砲の搭載も可能です」


ベレは興味深そうに図面を見つめる。


「なるほど……砲塔をなくすことで、その分を火力へ回せるのね」


「はい。歩兵支援や対戦車戦闘にも十分対応できます」


ベレは椅子にもたれ、机を軽く指で叩く。


トントントン……


しばらく考え込んだあと、小さく微笑んだ。


「いい提案だと思うわ。三号戦車の技術も無駄にならないし、生産性も改善できる」


技術者の表情が明るくなる。


「ありがとうございます!」


ベレは図面を閉じた。


「では、この案で試作を進めましょう。評価が良ければ量産も視野に入れて」


「はい!」


技術者は力強く敬礼した。

部屋を後にするその背中を見送りながら、ベレは小さく呟く。


「一つの失敗を、そのまま終わらせるのはもったいないものね。形を変えれば、新しい可能性が生まれることもあるわ」


三号戦車の車体は、新たな兵器として再び戦場へ立つ準備を始めようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。