世界の反応
フィン国とシア国の戦いは、瞬く間に世界各国へ知れ渡った。
各国の新聞には連日のように北方戦線の記事が並ぶ。
『シア軍苦戦か』
『小国フィン、予想外の善戦』
『北方戦線、膠着状態』
『世界各地からフィンへ同情の声』
それぞれ論調は違うものの、一つだけ共通していることがあった。
「フィンは、なぜ持ちこたえているのか」
その答えを求め、各国の政府も情報収集を始めていた。
――ギリス王国。
外務省。
机の上には北方戦線の報告書が積まれている。
外務大臣は一枚の資料を見て眉をひそめた。
「何だ、これは……」
情報局員が答える。
「共和国製兵器が実戦で確認されたとの報告です。一号戦車、三十八t戦車、一〇九戦闘機、八七急降下爆撃機。いずれもフィン軍が運用しております」
外務大臣は腕を組んだ。
「共和国が陰で支援しているのか?」
情報局員は頷く。
「武器弾薬の輸出は公表されております。さらに共和国軍事顧問団も現地へ派遣されているようです」
「なるほど……」
「直接参戦ではない、というわけか」
――ランス共和国。
統合作戦本部。
「共和国がまた動いたか」
将軍が地図を見つめる。
「武器輸出だけでは終わらんな。軍事顧問まで送り込んでいるとは」
参謀が静かに口を開く。
「現時点では義勇軍は確認されておりません。しかし、共和国製兵器の評価は高いようです」
将軍は苦々しく笑った。
「兵器の宣伝にもなっているということか」
――ルマニア王国。
国防省。
報告を聞いた国防大臣は満足そうに頷いた。
「やはり共和国製兵器は実戦でも通用するか。我が国の装備更新も間違ってはいなかったようだ」
軍幹部も続ける。
「今後も共和国との協力は進めるべきかと」
「うむ。引き続き交渉を続けよう」
一方、その頃。
フィン国外務省。
各国の外交官から質問が相次いでいた。
「共和国軍は参戦しているのか?」
「共和国製兵器は、どれほど届いている?」
「共和国軍事顧問団は何名だ?」
フィンの外務次官は淡々と答える。
「その件につきましては、お答えできません。共和国との協力内容は、両国間の取り決めです」
それでも質問は止まらない。
「では、共和国は貴国を軍事支援しているのですか?」
外務次官は小さく笑った。
「それよりも。もし我が国を支援していただけるのであれば、大変ありがたく思います」
外交官たちは顔を見合わせた。
質問には答えず、支援を呼びかける。
実にフィンらしい外交だった。
世界の視線は、今や北方戦線へ集まり始めていた。
そして、その中心には――静かに存在感を増しつつある共和国の姿があった。
――その頃。ペイン国。
首都では最後の抵抗が終わりを迎えていた。
政府軍司令部から白旗が掲げられる。
『政府軍、降伏。』
『首都陥落。』
その報告は、共和国義勇軍司令部にも届けられた。
司令官は報告書を閉じ、大きく息を吐く。
「ふぅ……」
「やっと終わったようだな」
隣にいた参謀も安堵した表情を浮かべる。
「そうみたいですな」
「政府軍は武装解除を開始しております」
「これで帰国ですかね」
司令官は苦笑した。
「恐らくだがな。ようやくのんびりできそうだ」
兵士たちも疲れた表情を見せながら、それぞれ装備の点検を始める。
長かった戦いが、ようやく終わろうとしていた。
しばらくして司令官が空を見上げる。
「しかし……航空支援ってのが、これほど脅威になるとは思わなかった」
参謀も頷く。
「ですな。前の大戦とは、大きく変わりました。あの頃は歩兵と砲兵が主役でしたが、今では航空機が戦場全体を動かしております」
司令官は静かに続ける。
「敵の補給を断ち。橋を落とし。前線へ増援も送れなくする。制空権を失えば、地上軍は思うように戦えん」
参謀は共和国製の一〇九戦闘機が飛び交う空を見上げた。
「戦車だけでも勝てない。歩兵だけでも勝てない。航空機との連携があって、初めて戦える時代になったということですな」
司令官は深く頷く。
「首脳部も、この戦いで多くを学ぶだろう。次の戦争は、陸軍だけでは勝てん」
共和国義勇軍は勝利の余韻に浸りながらも、新しい時代の戦い方を肌で感じていた。
ペインで得られた数々の実戦経験は、やがて共和国軍の教範や兵器開発へ反映され、新たな軍隊を築く礎となっていくのだった。




