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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


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次なる五年

執務室。


窓から差し込む朝日を眺めながら、私は静かに呟いた。


「もう五年か……」


共和国の首都へ来てから、気付けば五年の歳月が流れていた。


「早いようで、短いような」


五カ年計画。


道路整備。工場建設。農業改革。兵器開発。

外交。


思い返せば、休んだ記憶がほとんどない。

それでも結果は出ている。

共和国の工業力は飛躍的に伸び、周辺国との外交も動き始めた。


私は世界地図へ目を向ける。


「でも……」


各国の資料を見れば見るほど思い知らされる。


「国力差は、まだまだこんなにあるのね」


ギリス。メリカ。ランス。本国。

どの国も一筋縄ではいかない。


私は苦笑した。


「恐るべし……世界の国々ね」


共和国はようやく追い上げる立場になったばかりだ。

私は椅子へ腰掛け、腕を組む。


「さて。次は何を目標に進むべきか」


工業力は伸びた。

軍備も整いつつある。外交も広がっている。

しかし世界情勢は、相変わらず不安定だった。


フィン国。ルマニア国。そしてペイン国。


火種は各地に存在している。


「今でも世界は落ち着きがないわね」


資料の一枚には、この世界にも存在する国際会議の記録があった。


「世界会議……」


各国の代表が集まり、国際問題を話し合う場。

私はページを閉じる。


「でも、ほとんど機能していない」


決議はしても強制力がない。

大国同士が対立すれば、結局は何も決まらない。

私は小さく笑った。


「まあ、これは前世と一緒か」


理想だけでは世界は動かない。


利益と国力が絡めば、会議だけで争いは止められない。

私は机へ肘をつき、指先で机を軽く叩いた。


トントントン――。


静かな執務室に、小気味よい音だけが響く。


「次の五年……共和国は、どこまで進めるかしら」


軍事だけではない。


経済。科学。外交。教育。


まだ手を付けなければならないことは山ほどある。

私は世界地図を見つめながら、小さく微笑んだ。


「焦る必要はないわ。一歩ずつ、一歩ずつ」


その積み重ねこそが、やがて共和国を世界有数の国家へ導く。

そう信じて、私は新しい五年へ向けて思考を巡らせ始めた。


私は椅子に深く腰掛け、天井を見上げた。


「やっぱり……全ての事は、基礎よね」


どれだけ優れた兵器を作っても。

どれだけ新しい技術を開発しても。

それを支える土台が弱ければ、いずれ限界が来る。


共和国は、この五年間で随分と背伸びをしてきた。


工場。航空機。戦車。ロケット。


どれも前世の知識を頼りに、一気に押し上げてきた。


「今までは、少し背伸びした感があるわ」


だからこそ、一度立ち止まる必要がある。

私は指を折りながら考え始めた。


「まずは基礎工業力」


工作機械。製鉄。精密加工。部品の品質。

派手ではない。

しかし、それらが全ての産業を支えている。


「それから基礎科学」


物理。化学。冶金。電気。


理論を理解する人材が増えなければ、技術は発展しない。


「あと何かしら……」


私はしばらく考え込む。

やがて、小さく頷いた。


「教育ね」


優秀な技術者。研究者。職人。

現場を支える技能者。

国を支えるのは、一握りの天才ではない。

何万人もの基礎を身につけた人材だ。

さらに頭の中で整理していく。


「インフラもまだ伸ばせる」


鉄道。港湾。発電所。通信。


どれも目立たないが、国力そのものを底上げする。私は自然と笑みを浮かべた。


「中々、すぐには結果は出ない」


十年。二十年。


もしかしたら三十年先になって、ようやく成果が見えるかもしれない。


「でも、それでいい」


国家とは、一年で完成するものではない。

私はゆっくり立ち上がり、共和国の地図を見つめた。


「一呼吸置いて……基礎。足腰を鍛える」


その土台があれば、新しい技術が生まれてもすぐに形にできる。


強い産業。強い軍。豊かな国民生活。


その全てが、基礎の上に成り立つ。

私は静かに頷いた。


「次の五カ年は、この方向で行きましょう」


派手さはない。


しかし、その決断こそが、共和国を一時的な強国ではなく、何十年先も揺るがない大国へ育てる第一歩となるのだった。

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