↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
370/375

法と現実

執務室。


各省から提出された報告書を、一枚ずつ読み進める。


「ペイン国に関する各省の見解か……」


最初は外務省。


「シア国とランス国の影響力を軽減させるため、蜂起軍への支援を推奨……」


続いて情報省。


「同様に、蜂起軍を支援することで、両国の勢力拡大を抑制できる可能性が高い……」


私は静かに頷いた。


「まあ、この二つの省なら予想どおりね」


そして国防省の報告書を開く。


「……ん?」


思わず読み返す。


「派兵まで視野に入れているの?」


報告書には、派遣部隊の規模や必要な補給量まで細かく記されていた。


私は腕を組む。


「うーむ……」


恐らく国防省としては、単なる支援だけを考えているわけではない。


「現状の共和国軍の運用や装備が、実戦でどこまで通用するか……その検証も兼ねたいって感じかしら」


演習では分からないことも、実戦なら見えてくる。


兵器。補給。通信。指揮。


共和国軍にとっても貴重な経験になるだろう。


「でも……」


私は机の隅に置かれていた国際法の本を手に取った。ページをめくりながら、小さく呟く。


「法的解釈は……どうするか」


共和国が正規軍を派遣すれば、他国からは内政干渉と受け取られる可能性もある。


一方で、何もしなければシア国とランス国の影響力はさらに強まるかもしれない。


「うーん……」


私は本を閉じた。


「義勇軍として送る?」


正規軍ではなく、自発的に参加する義勇兵という形。


「何だか……言い方に違いだけの感じだけど」


法的にも外交的にも、その違いは決して小さくない。私は少し考え込み、結論を出した。


「この方向で、一度検討しましょう」


ベルを鳴らす。

すぐにラインが入室した。


「お呼びでしょうか」


「関係各省へ伝えて義勇軍という形での支援について、法的な問題や外交上の影響を整理してもらいたいの。実現可能かどうか、各省の見解をまとめて報告して」


ラインは静かに頷いた。


「承知しました」


共和国はまだ結論を出さない。

しかし、理想だけでも、力だけでも国は動かせない。法と現実、その両方を見据えた判断が求められていた。


その日の午後。


ラインが新たな報告書を持って執務室へ入ってきた。


「総統。ルマニア国から返答が届きました」


「もう?」


私は思わず苦笑する。


「外務省も動きが早いわね。まあ、遅いより良いか」


報告書を受け取り、目を通す。


「武器弾薬の購入につきましては、ぜひお願いしたいとのことです。それと、重工業に関する技術援助についても、正式に協議したいとの回答がありました」


私は小さく頷く。


「そう。予想どおりね」


さらに続きを読む。


「代金につきましては、石油による支払いを基本としたいとのことです」


私は思わず笑みを浮かべた。


「石油で支払い……ね」


共和国にとって、これ以上ない条件だった。


「備蓄が増えるのは良いことだわ。前向きに話を進めて頂戴」


「はっ」


石油はいくらあっても困らない。


軍も。工場も。航空機も。


将来の共和国は、今よりさらに大量の石油を必要とする。

今のうちから蓄えておいて損はない。

その時、ラインがもう一枚の報告書を差し出した。


「それと、技術局からも報告です。人造石油工場ですが、本格製造を開始したとのことです」


私は報告書を見つめる。


「やっと……か」


研究開始から長い時間が掛かった。


試験。改良。失敗の繰り返し。


それでも、ようやく量産体制へたどり着いた。


「これで石油を完全に輸入だけに頼らなくても済むわね」


もちろん、生産量はまだ十分ではない。

しかし、有事の際の保険としては大きな意味がある。


私は満足そうに頷いた。


「まあ……色々と手持ちのカードは、多い方が良いし」


天然石油。人造石油。そしてルマニア国との資源外交。共和国は、一つの手段だけに頼るつもりはない。


どんな状況になっても選択肢を残しておくこと。それこそが、国を守る一番の強さなのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。