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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


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広がる外交

執務室。


ラインが一枚の報告書を手に入室した。


「国防省から報告です」


「どうぞ」


私は書類へ目を通す。


「一号戦車、三十両」


「三十八t戦車、十両」


「一〇九戦闘機、二十五機」


「八七急降下爆撃機、十二機」


「五二輸送機、八機」


「以上であれば、共和国軍の戦力に影響はなく、輸出しても問題ないとの報告です」


私は思わず口元を緩めた。


「やるわね」


思っていた以上の数量だった。

これならフィン国への支援としても十分な規模になる。


「中古の装備も含まれているのでしょう?」


「はい」


「試験部隊や教導部隊で使用していた車両や機体も含まれております」


「それでも構わないわ」


私は頷いた。


「新品と中古品を含めた内容で販売できると、フィン国の外交官へ伝えてちょうだい。価格についても、資源との交換を含めて交渉を進めるように」


「承知しました」


ラインは一礼すると、すぐにメモを書き始めた。

私は椅子へ深く腰を下ろす。


「うーむ……」


今回の交渉は、フィン国だから決断できた。

資源も必要だった。

安全保障上も利益が一致している。


「でも……」


私は窓の外を眺める。


「今はフィン国だけに目を向けているけど……」


この先も、それでいいのだろうか。

共和国の工業力は着実に伸びている。

兵器だけではない。

機械、車両、工作機械。

いずれ輸出できるものはさらに増えていく。


「今後は全世界にも目を向けないとまずいってことよね……」


一国だけとの関係では限界がある。


資源を得る国。技術を求める国。

市場となる国。


それぞれと関係を築かなければ、共和国はさらに発展できない。


私は机の上の世界地図を静かに広げた。


「そろそろ……外交の視野も、世界へ広げる時期なのかもしれないわ」


共和国は軍事だけでなく、外交によっても大きく成長しようとしていた。


私は世界地図へ視線を移した。


「他国の国力……」


工業力。人口。資源。技術力。軍事力。


それぞれを知らなければ、外交も貿易も戦略は立てられない。


「特に周辺国に対しては、気を抜かない方が良いわね」


隣国の変化は、真っ先に共和国へ影響を及ぼす。

だからこそ、常に最新の情報を掴んでおく必要がある。


「うーむ……」


私は腕を組む。


「仮想敵……仮想味方……」


そんな分類をしておいた方がいいのかしら。

もちろん、一度決めたら永遠に変わらないものではない。

国同士の関係は、利益次第で簡単に変化する。


私は前世の記憶を思い返す。


「あの世界でも、昨日の敵が今日の味方なんて珍しくなかったわね」


だからこそ、決めつけるのは危険だ。


「となると……」


世界地図の一角へ目を向ける。


「今のところ、シア国は仮想敵候補……かな」


共和国の資源確保を考えれば、フィン国と対立する可能性が最も高い国だ。


しかし、私はすぐに首を横へ振った。


「でも、それも決めつけは良くないわね」


「相手にも事情があるでしょうし」


情報が少ないまま結論を出すのは危険だ。

私は机のベルを鳴らした。

ほどなくしてラインが入室する。


「お呼びでしょうか」


「情報省へ伝えてちょうだい」


「再度、周辺各国を中心に、各国の国力、資源、工業力、技術力、それに軍事力の調査をお願いしたいの。それと、共和国との友好度や利害関係も分析して報告してほしいわ」


ラインはすぐにメモを取る。


「承知しました」


私は小さく頷いた。


「こういう分析は、あちらの方が得意でしょう」


共和国が世界へ目を向けるなら、まず必要なのは兵器ではない。

正確な情報こそが、外交と安全保障の土台になるのだから。

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