可決された法案
共和国議会。
議長の進行で議事は淡々と進んでいく。
「次の議題は農業政策です」
賛成多数。可決。
「続いて工業政策」
可決。
「金融政策」
可決。
私は資料へ目を通しながら、小さく息を吐く。
「次から次へと進むわね」
議題は山ほどある。
一つ終われば次。休む暇もない。
それより気になることがあった。
野党席だ。
今日は出席している議員もいる。なのに……
「何も言わないわね」
批判もない。質問もない。
代案も出さない。
「何のために座ってるんだか……」
反対するなら反対すればいい。
修正案があるなら出せばいい。
黙って座っているだけでは議会の意味がない。
議長が次の議題を読み上げる。
「医療政策」
可決。
「公共事業政策」
可決。
私は書類をめくる。
「もう後半かしら」
次の瞬間だった。
「続きまして、全権委任法について」
「ん?」
私は手を止めた。
「全権委任法?」
そんな議題あったかしら?慌てて資料をめくる。
一枚。二枚。三枚。
「……ない」
どこにも載っていない。
「抜けてる?」
私は隣のラインへ小声で話しかけた。
「ラインさん」
「はい」
「全権委任法の資料、私がもらい忘れたみたい。持ってきてもらえる?」
ラインは落ち着いた表情で首を横に振る。
「大丈夫です。そのままお座りになってお待ちください」
「……?」
どういうこと?
話を聞けば分かるってこと?
そう思っている間にも議長は進行を続ける。
「本法案につきましては、事前協議が終了しておりますので討論を省略します」
私はますます首を傾げた。
そして議長が宣言する。
「全権委任法に賛成の方、起立をお願いします」
ガタッ。
議場の半数を超える議員が立ち上がる。
「起立多数。よって、本法案は可決されました」
木槌が鳴る。
コン。
私は呆然とその光景を見つめた。
「……え?」
議論が無かった。説明も無かった。
なのに可決された。
私はラインの方へゆっくり顔を向ける。
「……今の、何?」
ラインは小さく微笑んだ。
「後ほど、ご説明いたします」
私は嫌な予感しかしなかった。




