議会という仕事
共和国議会。
今日は朝から定例議会の日だ。
私は議場へ向かいながら、小さく息をついた。
「今日は一日中議会か……」
思わず空を見上げる。
「それにしても、次から次へと色んなことが起きるわね」
外交。軍備。経済。行政。
新しく共和国へ加わったチュコの問題。
ようやく一つ終わったと思えば、すぐ次の案件が待っている。
「まったく……」
苦笑が漏れる。
「政治家になる前は、こんな毎日だなんて思ってもいなかったわ」
前世で政治家を近くで見ていたことを思い出す。あの頃は会議へ出席する政治家を見て
「また会議?」
そんな程度にしか思っていなかった。
けれど今なら分かる。
会議の外側で。議会の裏側で。
誰にも見えない場所で、膨大な調整と判断が行われていたことを。
「……ごめんなさい」
思わず苦笑する。
「昔は政治家って楽そうなんて思っていたけど……」
「今なら心から謝れるわ」
私は抱えていた書類を見下ろす。
「それにしても……」
分厚い資料が何冊もある。
「見る書類、多すぎるのよ!」
思わず小さく愚痴をこぼしてしまった。
隣を歩くラインは、苦笑しながら答える。
「総統のお仕事ですから」
「分かってるわよ……」
議場へ入り、自席へ腰掛ける。
そこで私は違和感を覚えた。
「あれ?」
野党席に空席が目立つ。
「何かあったの?」
ラインが静かに答える。
「本日の審議を欠席するとの連絡がありました」
「……審議拒否?」
「そのようです」
私は額に手を当てた。
「はぁ……」
思わずため息が漏れる。
「全く、まだ懲りてないのかしら」
共和国議会では与党がすでに安定多数を確保している。
野党が欠席したところで議案は成立する。
議会そのものが止まることはない。
「でも、それとこれとは別よ」
私は静かに議場を見渡した。
「議論は必要でしょう?」
賛成だけでは見えない欠点もある。
反対意見があるからこそ、法案はより良いものになる。
「議場に来て、反対するなら堂々と反対すればいい!そのための議会なんだから」
ラインも静かに頷く。
「おっしゃるとおりです」
やがて議長が木槌を鳴らした。
「これより共和国議会を開会します」
静まり返った議場で、今日も共和国の未来を決める議論が始まろうとしていた。




