世界への声明
共和国中央庁舎前。
広場には派遣部隊が整列していた。
財務省から派遣される職員。
外務省、情報省、国防省から選抜された専門官。そして、その護衛を務める共和国親衛隊。
誰もが真剣な表情で前を向いている。
今回派遣される職員には、それぞれの任務が通達されていた。
財務省は、チュコ国の国庫や資産の調査・保全。
外務省は、帰属に関する正式な協議。
情報省は、現地情勢の確認と情報収集。
国防省は、治安維持体制の調整。
親衛隊は、それらすべての護衛と安全確保を担当する。
私は整列した派遣隊の前へ立った。
「皆さん」
静まり返る広場。
「今回の任務は共和国の未来を左右する重要な任務です。ですが、何よりも優先するのは皆さん自身の命です。決して無理はしないでください」
隊員たちは力強く敬礼した。
「共和国のために!」
「「はっ!」」
号令とともに車列がゆっくりと動き出す。
私はその姿が見えなくなるまで見送った。
そして、その足で中央庁舎の大会見場へ向かった。
既に世界各国の新聞社や通信社の記者たちが集まっている。無数のカメラが私へ向けられた。
静かに演台へ立つ。
「皆様。本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます」
会場が静まり返る。
私は一枚の書類へ目を落とし、ゆっくりと読み上げた。
「本日、共和国政府はチュコ臨時政府より正式に提出された帰属宣言を受理いたしました」
記者席がざわつく。
私は続ける。
「共和国政府は、この申し出を尊重し、必要な手続きを開始いたします」
フラッシュが一斉に光る。
「共和国は武力による併合を目的としておりません。今回の決定は、チュコ臨時政府による自主的な意思表示を尊重した結果です」
「現在、共和国は現地へ調査団を派遣しております。現地の安全確認、行政機能の確認、そして正式な帰属手続きを進める予定です」
記者たちは一斉に手を挙げ始める。
「総統閣下!」
「連合国への説明は!」
「軍事介入ではないと言い切れるのですか!」
「他国への影響は!」
次々と飛ぶ質問。
私は静かに会場を見渡した。
共和国の決断は、今この瞬間、世界へ発信された。
これが新たな外交の始まりになることを、まだ誰も知らなかった。
記者たちは一斉に手を挙げる。
「総統閣下!連合国への説明は、どのようにお考えですか?」
私は静かに頷いた。
「まず、その点についてお答えします」
会場が静まり返る。
「チュコ国は独立した主権国家でした。今回、政変が起きたことは事実です。しかし、新たに樹立された臨時政府が共和国への帰属を宣言したのであります」
私は記者席を見渡した。
「では、お聞きします。何故、その決定について共和国が連合国へ許可を求めなければならないのでしょうか?」
一瞬、会場が静まり返る。
「トリア王国の件とは違うのですか!」
別の記者が立ち上がる。
私は頷いた。
「違います。トリア王国では、市民から共和国への保護要請がありました。一方、今回は国家として樹立された臨時政府による正式な意思表示です。主体が異なります」
記者たちは慌ただしくメモを取る。
さらに別の記者が声を上げた。
「共和国による軍事介入ではありませんか!」
私は少し首を傾げた。
「軍事介入、ですか?」
一拍置いて答える。
「共和国は軍を派遣しておりません。これから派遣するのは外交官、財務官、情報担当者、そして調査団の安全を確保するための護衛部隊です。事実とは異なる印象を与える表現は、お控えいただければ幸いです」
場内が静まり返る。
さらに質問が飛ぶ。
「今回の件は、他国へどのような影響を与えるとお考えですか!」
私は穏やかな表情のまま答えた。
「それは私には分かりません。ですが、一つ申し上げます。チュコ臨時政府が共和国への帰属を選択した以上、過去にチュコ国と締結された条約や協定、あるいは支払いや契約などについて確認が必要な場合は、共和国政府までお問い合わせください。共和国は誠実に対応いたします」
その一言で、再び会場はざわめきに包まれた。




