隣国の激震
翌日。
総統府執務室。
ベレの机には外務省から運ばれてきた書類が積み上げられていた。
「少しずつだけど、問い合わせが増えてきたわね」
秘書官が一枚ずつ説明する。
「はい。武器輸出に関する照会であります。最初に正式な問い合わせを行ってきたのは串国に存在する軍閥政権です」
ベレは資料を眺める。
「まだ武力闘争中なのよね」
「はい」
「現在も複数の軍閥が勢力争いを続けております」
「なるほど……」
ベレは次の資料へ目を通した。
「こちらは?」
「北方のフィン国であります」
「シア国と長い国境を接しております。シア国内戦の混乱に乗じて独立した比較的新しい国家です。防衛力強化のため、小火器や砲兵装備に興味を示しております」
「若い国だからこそ、不安も大きいのね」
「その通りであります」
ベレは小さく息をついた。
「少しずつだけど、共和国製兵器が認知され始めているわね」
その時だった。
執務室の扉が勢いよく開く。
「総統閣下!緊急報告です!」
ベレは顔を上げた。
「どうしたの?」
伝令は息を切らせながら報告する。
「チュコ国でクーデターが発生しました!」
ベレは思わず立ち上がる。
「お隣で!?」
「はい!首都周辺で戦闘が始まっているとの情報です!」
ベレはすぐに指示を飛ばす。
「情報を集めて!軍の動き、政府の状況、外国の反応、全部よ!」
「はっ!」
伝令は再び駆け出していった。
静まり返った執務室で、ベレは深く息を吐く。
「……ふぅ。次から次へと問題が起こるわね」
共和国が安定へ向かう一方で、周囲の国々は混乱を深めていた。
その頃――。
総統府を後にしていたラインは、人目のない廊下を静かに歩いていた。
誰もいないことを確認すると、小さく笑みを浮かべる。
「どうやら、うまくいったようだな」
部下が静かに近づく。
「ライン様。反政府勢力が首都の一部を制圧したとの報告です」
ラインは満足そうに頷いた。
「順調だ」
部下は続ける。
「支援はどうされますか?」
ラインは少し考える。
「鹵獲して保管している武器もある。渡すという手もあるが……」
彼女は首を横に振った。
「いや。今回はクーデターだ。向こうから正式な要請がない以上、こちらから動く必要はない」
「今は静観する」
部下は頷いた。
「承知しました」
ラインは窓の外へ目を向ける。
遠く東の空。
その先で、一つの国が大きく揺れている。
「さて……どんな国が生まれるのか?見ものだな」
出来れば我が国の傀儡政権を樹立。そして圧力を掛ければ……静かに呟いたその声は、誰にも聞かれることなく廊下へ消えていった。




