↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
332/373

未来を見据えて

総統官邸。


朝の定例会議。

ベレは最初の資料を手に取った。


「今日は、まず空軍の件ね」


航空局長が立ち上がる。


「一〇九戦闘機ですが、試験結果は良好です。現在、先行量産型の生産を開始しております」


ベレは資料を見ながら頷いた。


「順調そうね」


「はい」


「一方で、前回ご指示いただいた大型輸送機や大型爆撃機につきましては、まだ基礎設計の段階です」


「やっぱり、まだまだね」


ベレは苦笑する。


「飛行機は一朝一夕では作れないもの。焦らず、地道に開発を続けてください」


「承知しました」


その時だった。

ベレがふとペンを止める。


「……そういえば、レーダーってのあるのかしら?」


会議室が静まり返る。

航空局長も通信大臣も顔を見合わせる。


「レーダー……ですか?」


「電波を使って遠くの飛行機や船を探知する装置よ」


誰も答えられない。

ベレは肩をすくめた。


「やっぱり無いのね。でも、そのうち必要になる気がするの」


通信大臣が興味深そうに身を乗り出す。


「どちらの部署で研究を?」


「それが分からないのよ」


ベレは苦笑した。


「だから関係ありそうな部署全部に資料を回してください。通信、大学、軍、研究所、電機メーカー……『興味がある』『研究できそうだ』というところを一つにまとめて、共同開発してください」


会議室がざわつく。

これまで省庁ごとの研究はあっても、横断的な共同開発は珍しかった。


「優先研究案件として指定します。予算も優先的に配分してください」


「承知しました」


次に内務大臣が立ち上がる。


「国勢調査の途中経過です」


大きな地図が広げられる。

人口分布。都市への人口流入。農村の高齢化。

工業地帯の労働力不足。


次々と数字が並ぶ。


ベレは静かに頷いた。


「やっぱり、調査して正解だったわ。これなら、本当に必要な場所へ予算も人材も回せる」


内務大臣も笑顔を見せる。


「今後は学校や病院、住宅建設も、より効率的に計画できます」


「良かった」


会議は終わりに近づいた。

しかしベレはもう一つ気になっていたことを口にする。


「情報省にお願いがあるんだけど」


ヘルムが顔を上げる。


「はい」


「周りの国の国力って調べられる?」


「国力……ですか?」


「例えば」


ベレは考えながら言葉を選ぶ。


「どれだけ鉄を作っているか?石炭はどれくらい採れるか?工場の数、車や飛行機、船を年間どれくらい生産しているか?あと、資源がどれだけ採れて、それをどれくらい加工できるか?」


ヘルムは静かに頷く。


「経済力そのものを比較したい、ということですね」


「そう」


ベレは少し首を傾げた。


「GDPっていう便利な指標があったけど……」


もちろん、この世界にそんな概念はまだ存在しない。


「なら、無いものは作ればいいわ」


ヘルムの目が少し輝く。


「各国の工業力、生産力、資源保有量を数値化し、定期的な報告書としてまとめます。それなら共和国だけでなく、各国の変化も追えます」


ベレは満足そうに笑った。


「お願い。数字は嘘をつかないから」


ヘルムは一礼する。


「情報省の新たな任務として進めます」


会議が終わると、ベレは窓の外へ目を向けた。

戦争は軍隊だけでは決まらない。


工場。資源。道路。人口。経済。


それらすべてが、一つの国の力になる。

だからこそ、共和国は兵器だけではなく、「国そのもの」を強くしようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。