突然の帰属宣言
総統官邸。
午前。執務室の扉が勢いよく開いた。
「総統!」
慌ただしくラインが駆け込んでくる。
その表情を見ただけで、ただ事ではないと分かった。
「どうしたの?」
「トリア国の最新情報です!」
「情報省より、緊急最優先の報告であります!」
ベレは立ち上がった。
「何が起きたの?」
ラインは一枚の報告書を差し出す。
「元政府が打倒されました。反政府側が勝利した模様です!」
ベレは目を見開く。
「……そう。上手くいったのね」
一瞬だけ安堵する。
しかし、その表情はすぐに引き締まった。
「問題はここからね。どうやって国を運営していくか?何か声明は発表したの?」
ラインは少し言いにくそうな表情を浮かべた。
「はい……それが。新政権は連合国に対し、共和国への帰属を求める声明を発表しました」
ベレは固まった。
「……はい?」
執務室が静まり返る。
ラインは報告を続ける。
「現在、この声明により連合国各国に動揺が広がっております。各国とも対応を協議中とのことです」
ベレは額に手を当てた。
「ちょっと待って!我が国に対しては?」
「いえ。共和国政府には、まだ正式な要請は届いておりません」
「どういうこと?」
ラインは冷静に分析する。
「恐らくですが。共和国へ直接要請するのではなく。まず連合国へ判断を求めたのでしょう。そうすれば共和国は表立って動く必要がありません」
ベレは少し考え込む。
「なるほど……共和国だけに要請したら、共和国が最初から主導していたと疑われる。それを避けたかったのね」
ラインも頷いた。
「その可能性は高いと思われます。非常に慎重な動きです」
ベレは窓の外を見つめた。
予想していた展開とは違う。
まさか?独立ではなく?共和国への帰属を求めるとは。
ラインが尋ねる。
「総統。こちらから何か声明を発表いたしますか?」
ベレはすぐに首を横に振った。
「いや。駄目。ここは沈黙を貫く」
ラインは頷く。
「承知しました。各国から問い合わせがあった場合も共和国政府はコメントを差し控える、という対応でよろしいでしょうか」
「ええ」
「それでお願い」
「はっ!」
ラインは敬礼すると、すぐに外務省への連絡へ向かった。
執務室には再び静寂が戻る。
ベレは一人、窓の外を眺めた。
「まさか……そんな方向へ来るとは思わなかった」
帰属を認めれば国際問題。
認めなければ元同胞を失望させる。
どちらを選んでも、大きな影響が出る。
ベレは静かに目を閉じた。
「私の沈黙は……合ってる?これが、本当に正しい判断なのかな……」
答えは、まだ誰にも分からなかった。
だからこそベレは、感情ではなく、共和国の未来を見据えながら、静かに次の一手を考え続けるのだった。




