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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


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国を知ることから

総統官邸。


午前の定例会議。

各省からの報告が一段落した頃、ベレがふと口を開いた。


「そういえば……」


会議室の視線が集まる。


「共和国の人口って、正確に分かってる?」


官僚たちは顔を見合わせた。

しばらく沈黙が続く。

やがて内務大臣が恐る恐る答えた。


「……おおよそ、であります」


「おおよそ?」


「各自治体からの報告を基に推計しておりますので、正確な数字ではございません」


ベレは思わず苦笑した。


「駄目じゃない。国を運営するのに、一番大事な数字でしょう?」


内務大臣も素直に頷く。


「その通りです」


ベレは立ち上がった。


「じゃあ、数えましょう」


会議室が静まり返る。


「共和国初の国勢調査を行います」


担当官たちが一斉にメモを取り始める。

ベレは指を折りながら項目を挙げていく。


「まず人口、年齢、職業、農家の数、工場の数。それから家族構成や住居の状況も確認しましょう」


内務大臣が尋ねる。


「かなり大規模になりますが……」


「構いません」


ベレは頷いた。


「感覚で政策は作れないもの。数字を知って、初めて正しい政策が立てられるのよ」


ラインも感心したように頷く。


「確かに、住宅や学校、病院を増やすにも人口が分からなければ計画できませんね」


「そういうこと」


ベレは笑顔で答えた。


「国を知ることが、国造りの第一歩よ」


その場で共和国初となる国勢調査の実施が決定された。

会議が終わりかけた頃。

ベレは机の端に積まれていた軍関係の資料へ目を向ける。


「それと……こっちも決めないとね」


ラインが資料を差し出す。


「陸軍、海軍、空軍の指揮体制についてです」


ベレは資料をめくりながら苦笑する。


「兵器の細かい性能は、正直よく分からないのよね」


会議室から小さな笑いが漏れる。


「だからこそ、現場を知っている人に任せます」


ベレはヘルムを見る。


「情報省で調査していた人材資料は?」


ヘルムは一冊のファイルを差し出した。


「こちらです。戦歴。指揮能力。部下からの信頼。人格。全て調査しております」


ベレは一人ひとりの経歴に目を通した。


「なるほど……現場を知っている人が多いわね」


ヘルムが頷く。


「机上の理論だけではなく、実戦経験も重視して選定しました」


ベレはゆっくり資料を閉じる。


「なら、この人たちにお願いしましょう。陸軍、海軍、空軍、それぞれの責任者に任命します。ただし」


会議室の全員がベレを見る。


「私は細かく口を出しません。現場のことは現場が一番知っているもの。私は必要な予算と環境を整えます」


国防大臣が微笑んだ。


「総統らしいお考えです」


ベレも笑顔で頷く。


「餅は餅屋、よ!専門家には専門家の仕事があります。私は、その人たちが力を発揮できる国を作ればいい」


こうして共和国では、初の国勢調査が始まり、同時に陸・海・空軍の新たな指揮体制も整えられることとなった。


国を知ること。そして、人を信じること。

その二つが、共和国をさらに前へ進める力となっていくのだった。

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