未来へ飛ぶ翼
総統官邸。
午前の定例会議。
通信大臣が嬉しそうな表情で立ち上がった。
「総統。以前より準備を進めておりました国営放送局ですが、いよいよ開局できる見込みです」
ベレは笑顔になる。
「本当?」
「はい」
「名称は、『共和国放送協会』を予定しております」
「いいじゃない!」
通信大臣は資料を広げた。
「放送内容ですが毎日のニュース、天気予報、農業情報、音楽番組、子ども向け番組、以上を中心に放送を開始したいと考えております」
ベレは次々と頷く。
「これは速攻でオッケーね!」
「ありがとうございます」
「それと」
通信大臣は続ける。
「災害発生時には、避難情報や緊急放送も行える体制を整えます」
ベレは満足そうに微笑んだ。
「それが一番大事!ラジオは娯楽だけじゃない。人の命も守れるものだから直ちに準備を進めてください」
「はっ!」
通信大臣が席へ戻ると、今度は国防大臣が大量の資料を机へ置いた。
ベレは思わず苦笑する。
「問題は……私の苦手な兵器類なのよねぇ」
会議室から小さな笑いが漏れる。
国防大臣が説明を始めた。
「まず、一〇九戦闘機です。試験結果は良好。量産可能との判断が出ました」
ベレは資料を眺める。
「うーん……じゃあ、生産開始!」
担当者が素早く書き留める。
「次に、一九〇戦闘機です。こちらは一〇九とは設計思想が異なります」
ベレは首を傾げる。
「毛色が違うのね?」
「はい。現在も開発を継続しております」
「なら、そのまま継続!」
「了解しました。続いて、八七急降下爆撃機」
ベレは資料を読み進める。
「使い方は……なるほど。地上軍への近接航空支援が主任務なのね」
「その通りです」
「じゃあ、生産開始!」
「はっ!」
「最後に、八八双発爆撃機です」
ベレは資料を見る。
「双発?」
「はい。エンジンを二基搭載しております」
「……」
ベレは少し考えたあと笑った。
「エンジンが二個付いた爆撃機。そのまんまじゃない」
会議室に笑いが広がる。
「こちらも、生産開始!」
「承知しました」
一通り説明が終わる。
ベレは資料を閉じた。
「うーむ。提案はこれだけ?」
国防大臣が頷く。
「現時点では以上です」
ベレはふと何かを思い出した。
「そういえば。今作っている輸送機って、何だったかしら?」
航空技術者が答える。
「Ka52輸送機です」
「そうそう!」
ベレは机を軽く叩いた。
「その後継機も考えましょう」
担当者たちが顔を上げる。
「後継機ですか?」
ベレは立ち上がった。
「エンジンを二基、あるいは四基搭載した大型輸送機を開発してください」
会議室がざわめく。
「大型輸送機……」
「はい。それと、その機体を基にした大型爆撃機も研究してください」
航空技術者が驚いた表情を見せる。
「かなり大型になります」
「構いません」
ベレは続けた。
「輸送機は、とにかく航続距離を重視してください」
「目標は?」
技術者が尋ねる。
ベレは少し考えてから答えた。
「メリカ国。もしくは本国まで、ノンストップで飛べる距離」
会議室が静まり返る。
「そこまで飛ぶのですか……」
「今は難しいかもしれません。でも、目標は高く」
ベレは窓の外を見つめた。
「それが完成すれば、人も荷物も飛行機で長距離移動できるようになる。軍だけじゃない。いつか民間でも、大陸を越えて飛べる日が来るかもしれない」
航空技術者たちは顔を見合わせる。
それは、まだ誰も見たことのない未来だった。
しかし共和国は、その未来を目指して歩み始めていた。
ベレは笑顔で締めくくる。
「未来の飛行機を作りましょう!共和国の空は、まだまだ広がるわ」




