共和国初の住宅公団
総統官邸。午前の定例会議。
内務大臣が一枚の資料を机の上へ置いた。
「総統。工業化の影響について、ご報告があります」
ベレは資料を受け取る。
「何か問題でも?」
「はい。首都や工業地帯へ人が集中しております」
資料には人口の推移がまとめられていた。
工場が建ち、仕事が増える。
その仕事を求めて人が集まる。
共和国の経済は順調だった。
しかし、その一方で新たな問題が生まれていた。
「住む家が足りません」
会議室が静まり返る。
ベレは資料を見ながら頷く。
「そうよね……工場だけ増やしても、人は住めないもの」
内務大臣は続ける。
「家賃も徐々に上昇しております。このままでは、働く場所はあっても住む場所がありません」
ベレは少し考え込む。
そして顔を上げた。
「なら、国が集合住宅を建てましょう」
会議室がざわつく。
「国がですか?」
「ええ。民間だけでは間に合わないなら、国も協力します」
ベレは立ち上がり、大きな地図を広げた。
「それと、ただ家を建てるだけじゃ駄目。最初から街を造りましょう」
担当者がメモを取り始める。
「まず、水道、下水道、電気、電話、郵便。生活に必要なものは、最初から整備します」
さらにベレは続けた。
「道路も広めに、区画整理もきちんと行います。将来、車が増えても困らないようにね」
交通大臣も頷く。
「確かに、その方が後から作り直す必要がありません」
ベレは笑顔で続ける。
「それと、公園も作ります。街路樹も植えましょう」
会議室が少し静かになる。
内務大臣が尋ねた。
「緑も必要なのですか?」
「もちろん。家ばかり並んでいたら息が詰まるでしょう?」
「子どもが遊ぶ場所、お年寄りが散歩できる場所、季節を感じられる街、そういう場所も必要よ」
担当者たちは次々とメモを書き込んでいく。
ベレは完成予想図を見ながら満足そうに頷いた。
「良い街になりそうね」
ラインが微笑む。
「まるで一つの新しい都市ですね」
「そうよ。どうせ造るなら、何十年先も住みやすい街にしたいもの」
内務大臣が最後に尋ねる。
「住宅公団を設立し、建設を進めてもよろしいでしょうか?」
ベレは迷うことなく頷いた。
「お願いします」
「まずは首都と工業地帯から始めましょう。住宅不足を少しずつ解消していきます」
「了解しました!」
会議が終わり、関係各省は一斉に動き始めた。
共和国初となる住宅公団。
新しい住宅。整備された道路。
水道、下水道、電気、電話、郵便。
そして、緑豊かな公園と街路樹。
ベレは完成予想図を眺めながら、小さく呟いた。
「働く場所だけじゃ駄目。安心して暮らせる家も必要よ」
共和国は工場を造るだけの国ではない。
人々が安心して暮らせる国を目指し、新しい街づくりも始まろうとしていた。




