軍を支える人材
総統官邸。午前の定例会議。
国防大臣が報告書を開いた。
「総統。軍人追放令の廃止により、元士官の多くが復帰しております」
ベレは頷く。
「良かったわ。経験者が戻ってくるのは心強いわね」
国防大臣は続ける。
「しかし、一つ課題があります」
「課題?」
「はい。復帰した士官の多くは、先の戦争当時の戦い方を前提としております」
ベレは腕を組んだ。
「そうよね……昔とは、軍そのものが変わり始めているもの」
机の上に並ぶ資料へ目を向ける。
戦車。空軍。無線機。軍用トラック。
これまで共和国が整備してきたものばかりだった。
「昔の人を戻すだけじゃ駄目よね?」
会議室が静まり返る。
ベレは続けた。
「戦車がある。空軍がある。無線でリアルタイムに連絡が取れる。トラックで補給もできる。昔とは、軍の形が変わっているわ」
国防大臣も頷いた。
「その通りです。そこで、ご提案があります」
一枚の資料を差し出す。
表紙には、
『軍教育再建計画』
と書かれていた。
ベレはページをめくる。
そこには、新たな教育機関の構想が並んでいた。
・陸軍士官学校
・空軍士官学校
・海軍士官学校
・参謀教育課程
・兵站教育課程
・通信教育課程
ベレは静かに読み進める。
「良いわね」
「これだけじゃありません」
国防大臣はさらに続けた。
「復帰した元士官に対する再教育も必要です。新しい装備、新しい戦術、新しい指揮方法。これらを学び直してもらいます」
ベレは笑顔になる。
「それよ!昔の経験は大切。でも、新しい時代には新しい知識も必要だもの」
ラインも頷いた。
「経験と新しい技術、その両方が必要ですね」
ベレは立ち上がった。
「決めました。でも少し修正をします!」
「修正でありますか?」
「この資料だと、陸海空に別れてますが、基本教育は、関係なく一つの士官学校として作ります。そこから陸海空の士官学校へ。そうなればお互いに情報共有しやすくなるかも。同期が空軍居るとか、海軍に居るとか」
「なるほど」
「その後、それぞれ陸軍・海軍・空軍の専門教育へ進みます。さらに兵站教育や通信教育など、各兵科に必要な専門課程も設けます」
「さらに軍大学も設立します。ここでは、より高度な指揮・戦略・参謀教育を行います」
会議室の全員が立ち上がる。
「了解!」
ベレは窓の外を見つめながら静かに言った。
「武器は作れば増やせます。でも、人はそうはいきません。教育には時間がかかる。だから今、始めるんです」
ラインが微笑む。
「総統らしいお考えですね」
ベレも微笑み返した。
「武器より先に、それを使う人を育てないと」
その日の午後。
共和国各地へ新たな命令が出された。
軍人学校の再建。
新たな教育課程の設立。
そして、復帰した士官たちへの再教育。
共和国は兵器を増やすだけではなく、それを正しく運用できる人材を育てる国へと、新たな一歩を踏み出した。




