共和国の翼
数日後。総統執務室の隣にある大会議室。
そこには、共和国国内から集められた数十社の代表者たちが顔を揃えていた。
航空機の設計経験を持つ企業。
かつて軍用機を製造していた企業。
エンジン会社。部品メーカー。
そして、Ka52輸送機を開発したカース社。
先の戦争が終わってから、航空機開発から離れていた者も少なくない。
「まさか……本当に再開するのか?」
「これだけの企業を集めたということは……」
会議室には小さなざわめきが広がっていた。
やがて扉が開く。
ベレがライン、国防大臣、空軍創設準備責任者とともに入室した。
全員が立ち上がる。
「皆さん、座ってください」
ベレは席へ着くと、集まった企業の代表者たちを見渡した。
「今日、皆さんに集まっていただいた理由は、すでに分かっていると思います」
会議室が静まり返る。
「共和国空軍を創設します」
ざわめきが一気に広がった。
ベレは続ける。
「そのために、共和国の航空産業を再び立ち上げます。皆さんには、新しい航空機の開発と生産をお願いしたいと思っています」
国防大臣が黒板の前へ立つ。
そこには、大きく三つの項目が書かれていた。
戦闘機
直接支援機
爆撃機
ベレは黒板を指差す。
「まず、大きく分けてこの三種類」
「戦闘機」
「地上部隊を支援する直接支援機」
「そして爆撃機です」
企業の代表者たちは真剣な表情で資料へ目を落とす。
「それぞれ、一種類だけではありません。各カテゴリー、二種類程度の開発を考えています」
一人の技術者が手を挙げる。
「総統。なぜ同じ種類の航空機を複数開発するのでしょうか?」
ベレは少し考えてから答えた。
「一つの会社、一つの設計だけに頼りたくないからです。実際に作って、飛ばして比べる」
「その中から、優れたものを選びたいと思っています」
技術者たちは互いに顔を見合わせる。
「競争試作……なるほど……」
ベレは続ける。
「もちろん、私には航空機の専門知識はありません。細かい性能や仕様については、軍と皆さんに任せます」
「軍が必要とする航空機を技術者の皆さんが形にしてください」
空軍創設準備責任者も口を開く。
「今後、空軍から必要な速度、航続距離、武装、運用方法などの要求を各社へ提示します」
「それに従い、開発を進めていただきます」
さらにベレは続ける。
「この三種類だけではありません」
「輸送機、偵察機、練習機」
「その他、軍から必要とされた航空機についても、順次開発をお願いします」
会議室の空気が変わっていく。
長い間、航空機を作ることを禁じられていた技術者たち。
その目に、少しずつ熱が戻っていた。
一人の老技術者が静かに尋ねる。
「総統。我々は……もう一度、飛行機を作っていいのですか?」
ベレは迷うことなく頷いた。
「はい」
「作ってください。共和国の空を守る飛行機を」
会議室は静まり返った。
そして次の瞬間。
大きな拍手が沸き起こる。
止まっていた共和国の航空産業が、再び動き始めた。
共和国は今、自らの手で、新しい翼を作ろうとしていた。




