ルー地方緊急電
総統官邸。定例会議の最中だった。
突然、執務室の電話が激しく鳴り響く。
ラインが素早く受話器を取る。
「こちら総統官邸、総統室です」
受話器の向こうから、切羽詰まった声が飛び込んできた。
「ルー地方司令部です!ランス国方面から発砲音多数!国境付近で銃撃を確認しました!」
ラインの表情が一変する。
「詳細は!」
「現在確認中です!」
「交戦なのか、演習なのか、それとも偶発的なものなのか判明しておりません!」
「分かった。引き続き報告を」
電話を切ったラインは、すぐにベレへ向き直る。
「総統……ルー地方より緊急連絡です」
会議室の空気が一気に張り詰めた。
ベレは静かに立ち上がる。
「全員、危機管理会議へ移行します。まずは事実確認。共和国軍には、こちらから発砲しないよう命令してください」
「挑発には乗りません。ただし、防御態勢だけは直ちに整えてください」
「了解!」
国防大臣、外務大臣、情報部長らが一斉に動き始める。
通信室では次々と命令が打電され、ルー地方司令部との連絡も強化された。
ベレは共和国とランス国の国境が描かれた地図を見つめ、小さく呟く。
「お願い……演習であって戦争じゃありませんように……」
しかし、その数十分後。
ルー地方から追加報告が届く。
「発砲音は断続的に継続!現時点でも原因は不明です!」
ベレは静かに目を閉じ、決断した。
「声明を発表します」
その日のうちに共和国政府は緊急声明を世界各国へ向けて発表した。
「共和国政府は、ランス国が国境付近において挑発行動を繰り返し、地域の緊張を著しく高めていることに対し、強く抗議します」
「共和国は平和を望みます。しかし、国民の生命と領土を守る責任があります」
ベレは続けて宣言した。
「敵対行動を繰り返すランス国に対し、共和国は条約の一部を追加で破棄することを決定しました」
会場がざわめく。
「これに伴い、自衛力強化のため、重兵器の研究・開発・生産を開始します。さらに、共和国空軍の創設を正式に宣言します」
世界中の記者が一斉に立ち上がり、無数のフラッシュが光る。
ラインは静かにベレを見つめた。
「総統……」
ベレは真っ直ぐ前を見据えたまま答える。
「私たちは戦争を望んでいるんじゃない」
「でも、国民を守る責任から逃げることもできない」
その声明は、わずか数時間で世界各国へ打電され、新たな国際情勢の幕開けを告げることとなった。




