祝祭の裏側
九二五年 冬。
首都では博覧会が盛大に開催されていた。
新しい共和国旗が風になびき、軍楽隊の演奏が街中へ響き渡る。
国民は笑顔でパレードを見守り、世界各国から訪れた来賓も共和国の発展に驚いていた。
その華やかな光景から少し離れた総統官邸。
ラインは執務室で、一通の電報を静かに見つめていた。
表向きは、ごく普通の業務連絡。
誰が読んでも何の変哲もない文章だった。
しかし、それはヴィルから送られてきた極秘電報だった。
二人だけが知る暗号。
ラインは暗号表を頭の中で照らし合わせる。
やがて、本当の意味が浮かび上がった。
『我、現地にて行動開始』
『計画第一段階へ移行』
ラインはゆっくりと息を吐く。
「始まったのね……」
さらに暗号を読み進める。
そこには、トリア国内で協調路線派の拠点を守るための工作や、相手勢力の動きを慎重に見極めながら行動を進める旨が記されていた。
ラインは静かに呟く。
「なるほど……」
共和国が表舞台で築いてきた信用は、一朝一夕で生まれたものではない。
そして、その信用を守るためには、人知れず動く者たちも必要だった。
ラインは電報を丁寧に畳み、極秘金庫へしまう。
窓の外からは、国民の歓声が聞こえてくる。
「共和国の未来は――表で支える者と、裏で支える者、その両方の努力で成り立っている。」
そう小さく呟くと、ラインは再び執務机へ向かい、次の極秘報告を待つのだった。
そして、数日間にわたって開催された共和国初の博覧会は、大きな事故もなく無事に閉幕した。
会場には連日、多くの国民が詰めかけ、世界各国から訪れた視察団も共和国の技術力を目の当たりにした。
国産自動車。Ka52輸送機。ラジオ。電話。
軍用トラック。農業機械。
数年前まで敗戦と混乱に苦しんでいた国とは思えないほどの発展に、各国の代表は驚きを隠せなかった。
「これが、あの共和国なのか……」
「復興だけではない」
「新たな技術国家へ生まれ変わろうとしている」
そんな声が各国の視察団から漏れる。
博覧会は、共和国の工業力、技術力、そして国民の努力を世界へ示す歴史的な催しとなった。
共和国はこの博覧会を通じて、高い技術力と、戦後復興を成し遂げた国の姿を、世界へ力強く見せつけたのだった。




