国民を守る軍隊
共和国陸軍工廠。
新たに開発された軍用トラックが整列していた。
国防大臣、ヘルム、ライン、そしてベレが視察に訪れる。
主任技師が敬礼する。
「総統。新型軍用トラックが完成しました」
ベレは車体を見ながら微笑む。
「思ったより大きいわね」
主任技師が説明を始める。
「兵員輸送だけではなく、物資の輸送も想定しております。悪路でも走行可能です」
国防大臣が満足そうに頷く。
「これなら兵站能力も大きく向上します」
しかし、ベレは首を横に振った。
「軍専用にはしません」
その一言に全員が驚く。
「総統?」
ベレは黒板へ用途を書き出した。
平時
・郵便輸送
・災害支援
・建設資材の運搬
有事
・兵員輸送
・兵站支援
ラインが思わず笑う。
「なるほど……一台で二つの役目を持たせるのですね」
ベレは頷く。
「普段から使っていれば整備技術も向上します。運転手も育ちます。いざという時だけ使うより、ずっと合理的でしょう?」
ヘルムも感心する。
「確かにその発想はなかったな」
数日後。
共和国各地へ配備された軍用トラックは、早速活躍を始めた。
郵便袋を積んで町へ向かう車。
建設資材を橋の工事現場へ運ぶ車。
大雨で川が増水した村では、土嚢を積んだ軍用トラックが次々と到着する。
兵士たちは住民と力を合わせ、堤防を補強していく。
別の町では、老朽化した橋の修理を工兵隊が進めていた。
近くでは軍が炊き出しを行い、温かいスープが配られている。
子どもたちは目を輝かせながら兵士たちのもとへ駆け寄った。
「軍人さん、ありがとう!」
若い兵士は照れくさそうに笑う。
「どういたしまして」
その様子を視察していたベレは、穏やかな表情で見つめていた。
ラインが尋ねる。
「総統。随分と軍の印象が変わりましたね」
ベレは静かに頷く。
「それでいいの軍は戦争をするためだけにあるんじゃない。国民を守るためにあるの。災害が起きれば真っ先に駆け付ける。橋が壊れれば直す。困っている人がいれば手を差し伸べる。それも軍の大切な仕事です」
国防大臣も深く頷いた。
「共和国軍は、国民と共にある軍隊になりますな」
ベレは笑顔で答える。
「ええ。国民から信頼される軍隊こそ、本当に強い軍隊なんです」
その日から共和国軍を見る国民の目は、少しずつ変わり始めていた。
戦うための軍隊ではなく、人々の暮らしを支え、守る軍隊へ。
共和国軍は、新しい時代の姿を歩み始めていた。




