変わり始める世界
ランス国議会。議長が木槌を打ち鳴らす。
「防衛法案!賛成多数により可決!」
議場から拍手が起こる。
その速報は瞬く間に世界中へ伝えられた。
その頃。共和国総統官邸。
ラインが電報を手に執務室へ飛び込む。
「総統!ランス国議会、防衛法案可決です!」
ベレは静かに目を閉じた。
「……そう。ついに可決したのね」
しばらく沈黙した後、静かに立ち上がる。
「準備していた声明を発表します」
数時間後。
共和国政府は世界各国へ向け、正式声明を発表した。
「ランス国による軍備拡張を受け、共和国は一部条約の破棄を通告します」
「併せて、自衛のための再軍備を開始することを宣言します」
声明は世界中へ配信され、大きな反響を呼んだ。
翌日。
ラインは新たな電報を持って執務室へ入る。
「総統!ギリス国より正式な通達です」
「内容は?」
「共和国海軍の保有を認めるとのことです」
ベレは驚く。
「認める?」
ラインは資料を読み上げる。
「ただし、ギリス国海軍戦力の二十五パーセントを上限とする条件付きです」
ベレは少し考え込む。
「これは一体……?」
ラインは冷静に分析する。
「恐らくですが……無制限に共和国の軍事力が拡大するよりも、一定の範囲で認めた方が、自国にとって管理しやすいと判断したのでしょう」
「共和国を完全に押さえ込むより、枠組みの中へ取り込む方が得策だ、と」
ベレは納得したように頷く。
「なるほどね。確かに共和国は陸軍国家。海軍は最低限あれば十分。その条件なら受け入れましょう」
ラインはメモを書き込む。
「直ちに返答いたします」
ベレは続けて尋ねた。
「他国の反応は?」
ラインは別の資料を開く。
「メリカ国、本国は、ランス国へ正式に抗議を行った模様です」
「先に軍備拡張へ踏み切ったことが、今回の事態を招いたと判断しているようです」
ベレは窓の外を見つめる。
「世界が動き始めたわね。共和国だけの問題じゃなくなった」
ラインも静かに頷く。
「外交戦の始まりです」
ベレは小さく微笑んだ。
「なら私たちは、慌てず、冷静に進みましょう。戦うのは軍隊だけじゃない。外交もまた、国を守る大切な力なのだから」




