兵士を守る改革
総統官邸。
ランス国の防衛法案可決を受け、共和国では臨時の国防会議が開かれていた。
国防大臣。
ヘルム。
ライン。
各軍の司令官たちが顔を揃える。
会議室は重苦しい空気に包まれていた。
ベレはゆっくりと立ち上がる。
「皆さん」
「共和国は、自衛のための再軍備を始めます」
誰もが静かに頷く。
しかし、ベレは続けた。
「ですが」
「最初に作るのは戦車ではありません」
会議室が少しざわつく。
「戦闘機でもありません」
国防大臣が尋ねる。
「では、何から始めるのでしょうか」
ベレは力強く答えた。
「まずは兵士の命を守る軍隊にします」
その言葉に、全員が耳を傾ける。
ベレは黒板へ次々と書いていく。
・新型軍服
・鋼鉄製ヘルメット
・携帯無線機
・医療隊の拡充
・輸送用トラック
「これらを優先します」
ヘルムが驚いた表情を見せる。
「戦車ではなく……ですか」
「ええ」
「どんなに優秀な兵士でも」
「装備が悪ければ命を落とします」
「負傷しても助けられなければ、それで終わりです」
会議室は静まり返った。
ベレは続ける。
「私は兵士を使い捨てる軍隊は作りません」
「一人でも多く生きて帰ってくる軍隊を作ります」
国防大臣も大きく頷いた。
「そのための再軍備ですか」
「はい」
「戦うためだけではありません」
「生きて帰るための軍隊です」
ラインも静かに笑う。
「総統らしいですね」
「普通なら真っ先に戦車や大砲を考えます」
ベレは苦笑した。
「もちろん、将来的には必要でしょう」
「でも今、一番足りないのは兵士を守る装備です」
ヘルムも腕を組みながら頷く。
「確かに」
「無線機があれば連携も取れる」
「トラックがあれば徒歩行軍も減る」
「医療隊が充実すれば救える命も増える」
「理にかなっています」
ベレは最後に全員を見渡した。
「共和国軍は強い軍隊を目指します」
「ですが、それ以上に」
「兵士が家族のもとへ帰れる軍隊を目指します」
会議室にいた全員が立ち上がった。
「了解!」
その日、共和国軍は新しい時代への第一歩を踏み出した。
それは敵を倒すための改革ではなく、兵士の命を守るための改革だった。




