大空への第一歩
共和国航空工場。
試作輸送機「Ka52」の初飛行の日を迎えていた。
滑走路の周りには、多くの技術者や整備士、航空学校の生徒たちが集まっている。
ベレとラインも視察に訪れていた。
主任技師が緊張した表情で報告する。
「総統。試験飛行の準備が整いました」
ベレは静かに頷いた。
「お願いします」
操縦席では、試験飛行を担当するパイロットが深呼吸をする。
整備士たちも最後の点検を終え、機体から離れた。
「エンジン始動!」
轟音が滑走路に響く。
プロペラが勢いよく回り始めた。
技術者たちは固唾をのんで見守る。
ゆっくりと滑走を始めたKa52は、徐々に速度を上げていく。
「頼む……!」
誰かが小さく呟いた。
そして――機首がゆっくりと持ち上がる。
「浮いた!」
Ka52は美しく大空へ舞い上がった。
歓声が上がる。
ベレも思わず笑顔になる。
「飛んだ……本当に飛んだ!」
ラインも感動した様子で空を見上げる。
「共和国の飛行機が……」
しばらく上空を旋回した後、Ka52はゆっくりと滑走路へ戻ってくる。
タイヤが地面に触れる。
機体は安定したまま滑走し、静かに停止した。
一瞬の静寂。
そして次の瞬間、大きな拍手と歓声が響き渡った。
整備士の一人は涙を流していた。
「飛んだ……」
「本当に飛んだんだ……」
主任技師も目頭を押さえる。
努力が、ようやく実を結んだ瞬間だった。
ベレは技術者たちの前へ歩み寄る。
「皆さん!おめでとうございます!これは共和国航空史の第一歩です」
技術者たちは一斉に頭を下げた。
「ありがとうございます!」
ベレは機体を見つめながら静かに言う。
「でも、飛行機だけでは駄目です」
ラインが頷く。
「パイロットですね」
「ええ」
「整備士も育てなければなりません!安全に飛ばし、安全に整備できる人材がいてこそ、本当の航空産業になります」
航空学校の校長も力強く答えた。
「全力で育成いたします」
ベレは続けた。
「それと、共和国初の航空郵便を立ち上げましょう」
その場にいた全員が驚く。
「航空郵便ですか?」
「はい!今まで数日かかっていた郵便も、飛行機なら数時間で届けられます」
ラインは嬉しそうに笑った。
「共和国の空を郵便が飛ぶ時代ですね」
主任技師は少し申し訳なさそうに話す。
「ただ、現時点では運航費が高く、郵送料金もかなり高額になります」
ベレは頷いた。
「構いません!最初から完璧である必要はありません」
「利用者が増えれば、技術も進歩し、いずれ誰もが利用できるようになります」
数日後。
共和国初の航空郵便機が、大切な郵便袋を積み込み、大空へ飛び立った。
それは、人だけでなく、想いまでも運ぶ新しい時代の始まりだった。




