極秘協力
総統官邸。
執務室で書類に目を通していたベレのもとへ、ラインが足早に入ってきた。
「総統!シア国から例の件について返答がありました!」
ベレは顔を上げる。
「了承してくれたの?」
「はい。極秘ではありますが、研究施設用地の提供に応じるとのことです」
ベレは静かに息を吐いた。
「これで……極秘で開発できるわね」
ラインも頷く。
「共和国では条約上難しい研究も、共同研究という形で進められます」
ベレは地図を見ながら考え込む。
「もちろん、一方的では駄目よ。こちらからは技術を少しずつ提供しましょう」
「工業技術や発電、鉄道、通信など、共和国が持っている技術を段階的に渡してください」
ラインは手帳へ書き込む。
「承知しました。見返りはどうされますか?」
ベレは少し考えた後、首を横に振る。
「お金はいらないわ。まだあちらの紙幣が信用が十分じゃないもの。現金よりも資源をお願いしましょう。鉱物でも木材でも、共和国で必要な資源を優先して受け取ってください」
ラインは感心したように頷いた。
「資源なら、お互いに利益がありますね」
「ええ」
「共和国は技術を提供する。シア国は資源を提供する。お互いに発展できる形が一番よ」
ラインは敬礼した。
「直ちに手配いたします」
「お願いします」
ラインが部屋を出ると、執務室は静かになった。
ベレは窓の外を眺めながら、小さく苦笑する。
「うーむ……まさか私が、こんな指示をする日が来るなんてね……」
前世では戦争を止めることだけを考えていた。
今は国を守るため、表では語れない外交まで考えている。
「はぁ……国を守るって、本当に難しいわね」
そう呟くと、ベレは机の上の書類を手に取り、次の仕事へと向かうのだった。
総統官邸。
総統執務室へ一人の技術者が駆け込んできた。
「総統!試作旅客機の設計が完成しました!」
ベレは思わず立ち上がる。
「本当ですか!」
ラインも驚いた表情で図面を覗き込む。
「いよいよ完成ですか」
技術者は大きく頷いた。
「はい!民間航空学校で育った技術者や操縦士の協力もあり、試作一号機が完成しました」
「名称は?」
「カース社製、Ka52輸送機です」
ベレは目を輝かせた。
「ぜひ見に行きましょう!」
数時間後。共和国航空工場。
格納庫の扉がゆっくりと開く。
そこには銀色に輝く一機の飛行機が姿を現した。ベレは思わず笑みを浮かべる。
「おー!前に乗った飛行機より、ずっと飛行機らしい!中々良いじゃない!!」
技術者たちは嬉しそうに顔を見合わせる。
主任技師が説明を始めた。
「旅客輸送を第一に設計しております」
「座席は二十名程度です」
「郵便物や小型貨物も積載できます」
ラインが感心したように頷く。
「人だけではなく、荷物も運べるのですね」
「はい」
「地方への郵便輸送や、緊急物資の輸送も想定しております」
ベレは機体を見つめながら静かに言った。
「いいですね!人を運ぶ飛行機を作りましょう」
「郵便も運べますね」
「災害が起きた時には、医師や薬、食料もすぐ届けられます」
技術者は力強く頷いた。
「そのために設計しました。軍用ではありません。共和国の人々の暮らしを支える飛行機です」
ベレは機体の翼にそっと手を添える。
「空を飛ぶ技術は、人を傷つけるためだけのものではありません!人を助け、人と人をつなぐためにも使えるんです」
その言葉に、工場の技術者たちは大きく頷いた。
格納庫の外では試験飛行の準備が始まる。
共和国の航空技術は、戦争ではなく、人々の未来を運ぶため、大空へ羽ばたこうとしていた。




