静かなる支援
総統官邸。
ラインは一人、情報部から届いた報告書を読み返していた。
「……やはりな」
トリア国。多民族国家。
国内にはいくつもの民族が暮らし、それぞれが異なる考えを持っている。
そのため政党も幾つにも分かれ、政権は常に不安定だった。
報告書にはこう記されていた。
『共和国との協調路線を望む勢力が拡大中』
『反対派との対立は続く』
ラインは静かに報告書を閉じる。
「言っていたことに嘘はないか。本気で国を変えようとしている連中だ」
しばらく考えた後、一枚の紙に必要事項を書き始めた。
「資金は……親衛隊の特別予算から回す。人材はヴィルだ。口も堅い。裏切る心配もない」
「武器は……」
ラインは小さく笑う。
「前の戦いで鹵獲した装備がある。表には出していない物も残してある。それを整備して引き渡そう」
計画書を書き終えると、小さく頷いた。
「これでいくか」
ベルを鳴らす。
「ヴィルを呼んでくれ」
「はっ!」
一方その頃。総統執務室。
ベレはルー地方から届いた報告書に目を通していた。
「総統。ルー地方の政府施設への電話線設置が完了しました。これで中央政府との連絡は即座に行えます」
ベレは嬉しそうに微笑む。
「良かった。何かあっても、すぐに連絡が取れるわね」
続いて別の資料を見る。
そこにはルー地方の治安維持部隊や軍の現状がまとめられていた。
ベレは静かにため息をつく。
「でも……軍事力は、まだまだね」
兵士の数。装備。車両。
どれを見ても十分とは言えない。
「はぁ……」
通信は整ってきた。復興も進んでいる。でも、国を守る力だけは簡単には育たないわね」
ベレは窓の外を見つめ、小さく呟いた。
「焦っちゃ駄目!一歩ずつ、一歩ずつ……」
共和国は、それぞれの場所で未来へ向けた準備を静かに進めていた。




