揺れる隣国
執務室で仕事をしていたラインのもとへ、一人の秘書官が入ってきた。
「ライン様」
「トリア国の政党代表団が到着しております」
ラインは書類から顔を上げた。
「総統との面会か?」
秘書官は首を横に振る。
「いえ」
「ライン様とお会いしたいそうです」
「私に?」
「はい」
「内密にお話ししたいことがあるとのことです」
ラインは少し考えた後、頷いた。
「分かった。応接室へ案内してくれ」
「はっ」
数分後。
応接室。
トリア国代表は深く頭を下げた。
「お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます」
ラインは穏やかに答える。
「構いません。それで、内密のお話とは?」
代表は周囲を確認し、小さな声で話し始めた。
「我が国の状況は、ご存じかと思います。国内では共和国との同盟、あるいは協調路線を目指す派閥と、反対する派閥が対立しております」
ラインは静かに頷く。
「情報部から報告は受けています」
代表は続けた。
「私どもは協調路線派です」
「それで、わざわざ私に?」
代表は苦笑した。
「まだ総統閣下へ直接お願いできる立場ではありません。まずはライン様へご相談したいと思い、参りました」
ラインは静かに促す。
「率直に話してください」
代表は意を決したように口を開いた。
「共和国から、裏で支援していただけないでしょうか」
ラインの表情が引き締まる。
「裏から……ですか」
「はい」
「資金、人材、そして……」
言葉が止まる。
ラインは静かに言った。
「その先は武器、ですね」
代表はゆっくり頷いた。
「……はい」
部屋に沈黙が流れる。
ラインは腕を組み、しばらく考え込んだ。
共和国に味方する国が増えれば、外交上の利益は大きい。
しかし、一歩間違えれば国際問題にもなりかねない。
やがてラインは静かに口を開いた。
「分かりました」
代表は顔を上げる。
「本当ですか?」
「共和国の利益になると判断しました。貴殿方が首都を離れる前に、第一段階の支援を手配します」
代表は深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」
ラインは真剣な表情で続けた。
「ただし、共和国の名は一切表に出しません。資金、人材の手配は極秘で進めます。以後のことは、状況を見ながら判断します」
代表は力強く頷いた。
「承知いたしました」
代表団が退出した後。
ラインは一人、窓の外を見つめる。
「これで……共和国に味方する国が、一つ増えるかもしれない」
そう呟くと、机の引き出しから極秘書類を取り出し、静かに第一段階の支援準備を始めた。




