声をつなぐ線
総統官邸。
全国送電網計画の報告を聞き終えたベレは、新たな資料を取り出した。
「次は通信です」
ラインが首を傾げる。
「通信……ですか?」
「ええ。ラジオは一方的に情報を届けることはできます。でも、相手と話すことはできません。電報や無線もありますが、一般の人には使いづらいですよね」
通信担当大臣が頷いた。
「確かに、電報は文章を送るだけですし、無線も専門知識が必要になります」
ベレは黒板へ大きく書いた。
『全国電話網整備計画』
会議室が静まり返る。
「電話線を全国へ張り巡らせます。離れた場所同士でも、その場で会話ができるようにします」
通信担当大臣は驚きを隠せなかった。
「全国規模ですか?」
「はい」
「ですが、一度にはできません」
ベレは地図を広げ、順番を書き込んでいく。
「第一段階。政府機関です。総統官邸。各省庁。地方自治体。まず行政を一本の電話網で結びます」
「第二段階。警察と消防、病院です。事件や事故、災害が起きた時、一刻も早く連絡を取れるようにします」
国防大臣も頷く。
「災害対応も格段に早くなりますね」
ベレは続ける。
「第三段階は企業です。工場。鉄道。港。商店。物流も経済も大きく変わります」
ラインが笑顔で尋ねた。
「そして最後は……」
ベレも笑顔で答える。
「個人のお宅です。家に居ながら遠くの家族や友人と話せる時代を作ります」
会議室には驚きと期待が入り混じった空気が流れる。
通信担当大臣が静かに口を開いた。
「電話交換局も必要になります。電話線だけではなく、交換機や保守技術者も育成しなければなりません」
ベレは大きく頷いた。
「その通りです。設備だけでは通信網は完成しません。人も一緒に育てましょう」
数日後。
共和国各地では測量隊が道路沿いに目印を立て始めた。
電話柱を建てる位置。
交換局の建設予定地。
通信技術者の募集。
すべてが少しずつ動き始める。
その様子を窓から眺めながら、ベレは静かに呟いた。
「ラジオは国民へ声を届けました。次は、国民同士が声を届け合う番です」
その日、共和国では新たな通信時代へ向けた第一歩が踏み出された。




