発明を守る制度
総統官邸。
共和国中央科学技術研究所が設立されてから数か月。
研究成果が次々と生まれ始めていた。
その一方で、新たな問題も浮上していた。
経済大臣が口を開く。
「総統。研究者や技術者から相談が増えております」
「どのような内容ですか?」
「特許制度についてです」
ベレは首を傾げた。
「特許制度は既にありますよね?」
法務大臣が資料を差し出す。
「はい。しかし現在の制度は非常に複雑です。申請書類も多く、専門知識がなければ手続きが困難です」
「中小企業や個人の発明家では、途中で諦めてしまう方も少なくありません」
ベレは資料を読みながらため息をついた。
「せっかく良い発明があっても、制度が邪魔をしているのね」
ラインも頷く。
「研究者は研究が仕事です。書類を書くために研究をしている訳ではありませんから」
ベレは立ち上がり、黒板へ大きく書いた。
『発明は国の財産』
会議室が静まり返る。
「発明した人が報われない国に未来はありません。だから制度を変えます」
法務大臣が尋ねる。
「特許制度そのものを改正されますか?」
ベレは首を横に振った。
「いいえ。制度は残します。でも、もっと利用しやすくします」
黒板へ新たに書き加える。
『特許支援局』
「この部署を新設します!特許申請の相談。書類作成の補助。申請手続きの案内。中小企業や個人発明家への支援。行政が最後までサポートします」
会議室から感心の声が上がる。
「なるほど……制度を変えるのではなく、利用しやすくするのですね」
ベレは笑顔で頷いた。
「難しい制度を作るのは簡単です。でも、本当に大切なのは誰でも使える制度です」
数日後。
新設された特許支援局には、多くの研究者や技術者が訪れていた。
その中にはリード・ベルの姿もあった。
「これなら、人造石油の特許も安心して申請できます」
フェル・ポルシュも笑顔で書類を手にする。
「設計より書類の方が苦手だったので、本当に助かります」
担当職員が丁寧に説明する。
「ご安心ください。最後まで私たちがお手伝いします」
二人は顔を見合わせて笑った。
その様子を見ていたラインが小さく呟く。
「総統。また一つ、研究者が働きやすい国になりましたね」
ベレは窓の外を眺めながら頷いた。
「ええ。良い発明は、人の暮らしを豊かにします。だから私たちの仕事は、発明を生み出すことではありません。発明する人を支えることです」
こうして共和国では、発明を守るだけではなく、発明家を支える新しい制度が動き始めた。
それは未来への挑戦を後押しする、新たな一歩となった。




