世界が学びに来る
総統官邸。朝の執務室。
ラインが数通の封書を抱えて入ってきた。
「総統。少々、珍しい依頼が届いております」
ベレは顔を上げる。
「珍しい?」
「はい。他国の複数の政党から、総統との会談を希望する申し入れです」
「政党から?」
ラインは封書を机へ並べる。
「メリカ国、ギリス国、本国をはじめ、複数の国です。皆さん、共和国の政策や党の方針に共鳴し、一度話を聞きたいとのことです」
ベレは少し驚いた表情を見せた。
「政府じゃなくて、政党なのね」
「はい」
「政権与党だけではなく、野党からも申し込みが来ています」
ベレは腕を組んで考える。
「うーん……いいんじゃないかな?断る理由もないし。段取りをお願いします」
ラインは笑顔で頷いた。
「承知しました」
数日後。
共和国の党本部。
大会議室には各国から集まった政党関係者が並んでいた。
与党議員。野党議員。若手政治家。
それぞれが共和国の改革に強い関心を抱いている。
ベレが入室すると、一斉に立ち上がった。
「ようこそ共和国へ」
拍手が響く。
最初に口を開いたのはメリカ国の若い議員だった。
「総統。どうして短期間でここまで国を立て直せたのですか?」
続いてギリス国の議員も質問する。
「公共事業や工業学校、国民食堂……」
「なぜ、その政策を思いついたのでしょうか」
本国の議員も続く。
「さらに、戦争に勝ちながら戦後賠償を求めなかった理由も教えていただきたい」
次々と質問が飛ぶ。
ベレは静かに微笑んだ。
「特別なことはしていません」
会場は静まり返る。
「国民が困っていたから働く場所を作りました」
「学ぶ場所がなかったから学校を作りました」
「研究する場所がなかったから研究所を作りました」
「制度が足りなかったから制度を作りました」
「それだけです」
一人の若い議員が小さく呟く。
「制度……」
ベレは頷いた。
「英雄が国を救うのではありません。制度が国を守るのです」
その言葉を聞いた各国の議員たちは静かにメモを取る。
会談は予定時間を大きく超えて続いた。
帰り際。
メリカ国の議員が深く頭を下げる。
「今日は本当に勉強になりました」
ギリス国の議員も笑顔を見せる。
「共和国へ来て正解でした」
本国の議員は手を差し出した。
「私たちも、自国で挑戦してみます」
ベレはその手をしっかり握り返した。
「良い国を作る方法は、一つではありません。お互いに学び合いましょう」
その日から、共和国は復興した国としてだけではなく。
世界の政治家たちが学びに来る国としても、その名を知られるようになっていった。




